新シリーズ
政治と暮らし
第1回目 ――安全な住まいを求めて――
馬淵 澄夫
政治家。
私たち庶民からはずっと遠い存在に思える人々。
だが、彼らだって同じ人間だ。
国会を離れたとき、彼らが何を考え、
どんな日常を送っているか、
さまざまな疑問をぶつけていくシリーズ。
第1回目は、耐震強度偽装問題での、
舌鋒鋭く与党に斬り込んでいった姿が
記憶に新しい民主党のホープ、
衆議院議員・馬淵澄夫さんの登場だ。
一語一句忠実に再現したインタヴューの中から
どんな未来が見えるだろうか。
耐震偽造の質疑役は
偶然から始まった
- 井形 先日、ちょうど自宅で住宅問題の原稿を書いていたとき、テレビをつけたら馬淵さんが国会で鋭い質問をされていた。関西弁ですっごいシャープな馬淵さんに、うわー、スゴイ! と思っているうちにドンドン引き込まれて。
馬淵 いやいや、そうですか(笑)。
井形 なんて的確な言葉を使われるんだろうと感動したんです。
馬淵 実は、耐震偽造の問題で質疑の役が自分に回ってきたのは、まったくの偶然なんです。去年の11月24日に、私の事務所に2冊の構造計算書が届けられたんですよ。中身を見ると、17日に発表された耐震強度偽装問題に関わる書類で。
井形 すごい情報ですね。
馬淵 慌てて党の本部に持って行くと、(君は)この問題にかかわることになるかもしれないから、5分後に出るバスに乗ってくれと言われたんですよ。何のことかわかりませんよね? 民主党の現地調査視察団のバスだったんですが、とにかく走って飛び乗った。
そのあと、民主党の国土交通担当の長妻代議士に調査報告したら、「じゃあ、馬淵さん、質問やってよ」と言われた。私は国土交通部門の担当じゃなかったのに。
井形 鋭い質問をするための周到な下調べや資料の準備はどのようにされたんですか?
馬淵 1週間ほど時間があれば、その間に徹底的に調べます。私の場合は、現地に足を運ぶということなんですけどね。
井形 取材ですね。
馬淵 そう取材。耐震強度偽装問題についてはまず現地に行って、実際に問題のマンションにお住まいの方々に話を伺って、そこから新たな人を紹介され、次の手がかりが出てきた。
井形 手がかり、ですか?
馬淵 ええ。たとえばあそこの工務店はこんなだったよとか、もともと建設会社にいた人が所長やってるんだよとか、住民の方々が教えてくれる。そこで「よくご存じですね!」と言うと「俺は知り合いなんや」と。
井形 つながっていくんですね。
馬淵 ええ、だから現場に足を運ぶことが第一なんですよ。ただこれは時間があれば、という場合であって、「明日質問してくれ」という時はそうもいかない。
井形 そんな急なこともあるんですか?
馬淵 あります。その場合はもう、徹夜で。もともと、いくつも用意しておいた引き出しの中から、これはもう少し論点を整理すれば明日1時間の質疑に耐えられるぞとか、自分なりに判断して形にしていく。
井形 そして、それを党の誰かに提出するんですか?
馬淵 いえ、それはしません。提出する先もないですから。そもそも党というのは、選挙で選ばれた一国一城の主の集まりで、それぞれの責任と能力において質問する機会を与える場なんです。
井形 では、私がもし政治家になって、質問したい! と言えばやらせてもらえるんでしょうか?
馬淵 ええ。医療、子育て、住宅問題、なんでもいい。そこに関わる委員会に行って「私に質問させてください」と言えばやらせてくれます。
井形 そうなんですか。私は、馬淵さんが弁舌鮮やかな論理派なので、それで抜擢されたのかなって思ってました。
馬淵 ああ、そう思うんですね(笑)。確かに耐震強度偽装問題については偶然でしたが、予算委員会では選んで頂きました。予算委員会は、全大臣を呼べるという国会の中でも花形委員会です。この委員会に委員として選ばれたのは2期生で私1人でしたが(笑)。
言わせたい言葉が
あるからそれを引き出す
- 井形 ところで、国会の中継を見ていても、日本の政治家の言葉は曖昧だし、歪曲表現だし、はっきり言ってよくわからない。そう思いませんか?
馬淵 いやぁ、思いますね。特に政府側の答弁ね。はっきり答えられないところに意味がある、みたいな感じなんですよね。
井形 でも、そればっかりですね。聞いててイライラしませんか?
馬淵 しますよー。玉虫色で、どちらでも取れるような答弁を繰り返す。だから、それをハッキリさせるというのが質疑者の能力を問われるところなんです。
井形 私が見た質疑では、馬淵さんは緊張気味でゆっくりお話になっていた。この人って、案外弱腰かなぁと思って見ていたら5分、10分経ったときに言葉が炸裂。最初っからワーッと迫ったわけじゃないでしょ?
馬淵 ああ、やらないですよ。国会の質疑は怒鳴り合う場ではないので、最初は抑制してきちんと事実を確認していく。
井形 なるほど! あれは事実を確認してたんですね。
馬淵 言わせたい言葉があるから。それを引き出すためにいろんな角度から聞く。それで、問題発言があったときに、「おかしいじゃないか!」と、ダーン! といきます。そのときは声のトーンもね、思いっきり、万感の思いを込めてね。
井形 確かに「住民の皆さんが!」という言葉はほんとに伝わってきました。
馬淵 自分なりにね、質疑全体の1時間のストーリーがあるんですよ。僕はいつもストーリーがビジュアルで浮かぶんです。その通りに進むと、「よーしハマったな!」って(笑)。
井形 自分がやりこめられる姿というのは考えないんですか?
馬淵 いや、それも時には頭に浮かびますよ。でも、プラスのイメージを持っておく。それでも予想もしない答えが返ってきて、こっちが調べたことと違ったりしたら焦りますよ。「やべっ!」って(笑)。
井形 そういうときの切り抜け方とかって、あるんですか?
馬淵 ごまかせないんで、もう高速で頭を回転させます。今回もね、1つ2つありました。私の発言に対して「いや、この法律にはかからないんだ」と言われて、うわっ、しまった……調べときゃよかったと思いました。あれは与謝野大臣の時でしたけどね、国家公務員の一件で、国家公務員倫理法適用外だと言われてね、ええ、うっそーっと思って(笑)。
井形 でも、顔に出せないですよね?
馬淵 そこでもう1回、冷静になれと思って……「立法趣旨に則って、法の適用外と言ったからってそれは通らないだろう。なぜこの法律ができたのか、立法されたときの趣旨を思い出してください!」とやって、グワーッとひっくり返す。
井形 すごい!
馬淵 これだこれだと、そのときは自信満々の顔で、「何を言ってるんですかぁ! ふざけんのもいい加減にしてください大臣!」と言っていても、その数秒前は「しまったー……」となってたんですけどね(笑)。
井形 さすがーっ! 役者ですねぇ。
「委員長!」と
手をあげて立った瞬間、
緊張はピークです
- 井形 このディベートはどこで勉強されたんですか?
馬淵 よく聞かれるんですけど、6年前までいたビジネスの世界、それが修行の場だったかもしれませんね。社長という立場で、もっと大きな資本提携についてどのようにするか、という局面もありましたからね。
井形 では、質疑のいらだちに打ち勝つためのモチベーションってあります?
馬淵 ええ。ひとつはいかなるときも冷静を保つ。もうひとつは大義の存在。なぜ自分はこのことを訊かなければならないのか、そこが揺らいじゃダメなんですよね。これは正義なのだ。これを明らかにしないと国民は納得しないんだ。そういう大義が自分の中にないと、やっぱり途中で引いちゃうんですよね。
井形 めんどくさくなって?
馬淵 というかね、逃げられたら追っかける気力を失うんですよ。
井形 わかります。私も見てて楽しい。もっとやれやれーって思いますから。(相手に)お前ウソつくなー! って(笑)。
馬淵 ありがとうございます(笑)。でも、いつも緊張してやってるんですよ。
井形 馬淵さんでも緊張されるんですか?
馬淵 そりゃ、しますよ。「委員長」と手を挙げ、名前呼ばれてすくっと立ったその瞬間はドキドキします。でも野次や怒号や、相手の大臣からどんな言葉が飛んできても、ひるまないぞと、それだけです。戦う姿勢を見せ続けることで、相手がひるんでくる場面も出てきますから。
井形 それは相手の表情でわかるんですか?
馬淵 わかりますよ。
井形 目で?
馬淵 目、表情、態度でね。それにそういう表情を国民の前で見せることで、テレビを見てる皆さんも、『あ、これはウソついてるな、政府はずるしてるなって』やっぱり透けて見えるじゃないですか。
井形 そうですね。テレビは表情をアップで映しますからね。
馬淵 それは僕らにもいえる。いい加減な質問をすると、跳ね返されて窮する表情が、やっぱり映る。だからこそ、しっかりと事実に基づいて本質の論点をずらさない質問をしなきゃいけない。
政治家の言葉と
テレビでウケル言葉は違う
- 井形 政治家って、話ヘタだとダメですよね。
馬淵 と思いますよ。だって、僕らは言葉しかないんですよ。政治家は言葉が武器であり魂。でも、言葉を大事にしない政治家が多すぎるんです。
井形 そうです! 話し方教室行った方がいいんじゃないかと思って。
馬淵 まして、バラエティーに安易に出ちゃうでしょ。バラエティーが悪いとは言いませんが、政治家として発する言葉と、テレビでウケる言葉というのを自分の中でちゃんと吟味できるレベルになってからでないと、こわいなと思う。今回のメール問題なんかでね、出てくれなんて言われてもね……。
井形 出演依頼きたんですか?
馬淵 もう、いっぱい来ました。……でも、僕はコメンテーターでもないし、ほら、テレビってタレント求めてるじゃないですか。アレが怖いんですよね。
井形 まだ早すぎると?
馬淵 というか、政治的な実績があるワケじゃない僕が、自分がやったことについてなら言えるけれど、何か影響力を持つ人間のような顔をして出て行くことは大きな勘違いだと思うんです。僕ね、昔会社やってたときに考えていた。「かぶく人たち」を「かぶきもの」と呼び、それが歌舞伎という芝居になったんですね。「かぶく」とは、ある意味、人に対して物事を極端にデフォルメすることです。でも、本質をデフォルメしながらも人の心に染み渡るような詩的なポエムを作り、時にはショーアップする。物事の本質をとらえた表現方法です。政治家というのはかぶけないとダメだと思うんです。でも、かぶく瞬間はね、本質じゃないといけない。でないと、単なるおっちょこちょいになってしまう。
井形 難しい分かれ道ですね。
馬淵 ええ。そういう意味じゃ、僕は小泉さんは見事にかぶいてると思うんですね。
井形 私もそう思います。海外のメディアもそこをよく取り上げる。
馬淵 ブレアさんにしても、あるいはレーガン、クリントンもそう。
井形 これはイメージ作りとも違いますね。
馬淵 ええ。本質に対して、国民や庶民に突き刺さる言葉を瞬時に把握できること。これはもう天性。勉強だけできた人にはたどり着けない世界です。
たとえば小泉さんのかぶくすごさ、「自民党をぶっ壊す」とよくおっしゃるでしょ。「ぶっ」「ぶ」と小さな「つ」、これを付けられるか付けられないかの違いに気付いた。自民党を壊すというのは誰でも言える。でもそこに「ぶっ」をつける。そのセンスというのが、かぶきものの証明なんですよ。小泉さんは郵政民営化のときに「殺されてもいい!」と言ったでしょ。普通に考えたら殺されるわけないじゃないですか(笑)。総理なのにあり得ない。
井形 大げさですね(笑)。
馬淵 でも、そこで「殺されてもいい!」これがかぶきものの極み! これができるかどうかでドーンと大きな差がつきますから。
井形 人気もね。かぶける人は人気が出る。
馬淵 そう。でも、これを間違えたら痛い目に遭うんですよ。これは真似する世界じゃない。その人の天性、そして生きてきた歴史、経験の中で身につけるものだから。
井形 それはご自分で見つけた法則ですか?
馬淵 ええ、こんなことばっか考えてるんですよね(笑)。なぜ彼は大衆の心を掴めるのか。レベルは違うけど、僕も会社で社員の心を掴むにはどうするか……そればっか考えてやってきたから。
奈良の大家族と
議員宿舎の一人暮らし
- 井形 ところで私、馬淵さんと同世代なんですよ。
馬淵 ああ、光栄です(笑)。
井形 熱血漢であるところや、根性はよく分かります。私なんか、バレーボールの『サインはV』見たり。
馬淵 『アタックNo・1』とかね。僕なんかは『巨人の星』ですけどね。男の子はね(笑)。
井形 そういう世代なので熱いですよね。馬淵さんって、以前は建設会社にお勤めだったとか。
馬淵 そうですね。大学を卒業してから5年間、いわゆるゼネコンにいました。
井形 だから、この耐震偽造の問題に詳しいのかなぁなんて。
馬淵 まぁ、少しは役に立った部分があるかもしれませんけどね……、それでも建築の現場じゃなく土木でした。
井形 同潤会アパートに行かれた時のこと、ブログで拝見したんですけれども、日本って、ああいう趣のある建物とか街並みが消えていくのはどうしてだと思います?
馬淵 それ、非常に重要なポイントだと思うんですけど、日本はヒューマンスケールを忘れた街作りがドンドン進んでしまっている。そこは、人と人が油断して交われる場所、昔なら井戸端だとか、見通せない角だとか、そういった一見ムダに見えるけど、人が生きていく上でなきゃいけない場所。それを確保せずにとにかく機械的に、無機質に建物を造ってしまった。それこそが、近年の日本の街作りの大きな問題点ではないかと思うんですね。
同潤会アパートは、ヨーロッパのアパートメントのような、素晴らしい試みを行ったけれども、それがやがて、住宅公団に変わっていき、南向きの板状の羊羹のような建物と共に南面板状神話ができあがる。
井形 南向きが最上という価値観の始まりですね。
馬淵 でも僕自身はね、南面板状神話の団地で生まれ育った。そこから街のアイデンティティというものができあがってくる。ただし、こんな建物ではね、何十年もの時間がかかってしまう。そこに建築家や建設業に関わる人々は、意識を向けなきゃダメなんです。
井形 では、現在の奈良のご自宅はどんなお家なんですか? お子さんが6人もいらっしゃるということで、大きな家ではないかと……。
馬淵 6人の子供と、私の両親と家内の両親、12人家族で暮らしてきましたからね。
井形 ええー、お互いのご両親もご一緒に?
馬淵 そうです。実は僕の母が認知症なんで一緒に住まざるを得ない。家内の父も寝たきりの状態だったので、それならば一緒に12人で暮らそうと。おばあちゃんのお世話は一番上のお姉ちゃんね、赤ちゃんのお世話は2番目のお姉ちゃんね、というふうに、寝たきりのお父さんのお世話は僕と家内と義理の母とで交互に……そういう暮らしの中で、ああこれは社会の縮図だなと思ったんですね。そこに政治的な課題の本質もある。
井形 なるほど。ちなみに一人ひとりのお部屋はあるんですか?
馬淵 個室なんてないですよ(笑)。おじいちゃん、おばあちゃんの部屋だけは別にしてますが。基本的には空いてる部屋に寝るという感じですね。
井形 そうなんですか!
馬淵 だから、私なんて帰宅したら空いてる部屋に寝るしかないんですよ。
井形 いまはどこに寝ているんですか?
馬淵 最近は幼稚園に行ってる下の子が家内と寝室で寝ているので、仕方なく息子の部屋に行ったり(笑)。義理のお母さんの部屋に行って、ごめんなさいって横に布団敷いて寝かしてもらったりね(笑)。
金銭感覚はとてもシビア
電車に乗り、
激安店で靴を買う
- 井形 ふだんは東京の議員宿舎に一人でお住まいだと思うんですが、馬淵さんはお小遣いを毎月もらっているんですか? それとも自己管理?
馬淵 私の場合、お小遣いが生活費そのものですから、自己管理ですね。ただ、基本的に無駄遣いはしない。非常にお金に関してはシビアです。タクシーはもったいないので電車に乗って移動するとかね。
井形 議員バッチつけたままで、ですか?
馬淵 その時ははずして(笑)。さすがに最近は顔を覚えられているのか、ちょっといやだなと思うときもあるんですけど。「あ、馬淵だ」と言われたりね(笑)。
井形 そんな馬淵さん、すごいオシャレだと思うんですよ。ピンクとかパープル、お好きですよね?
馬淵 いやぁ……なるべく明るめの色にしろと言われているので、顔が怖いから(笑)。
井形 いえいえ、ところがケータイもパールピンクですよね。なんというか、JJガールみたいな感じ(笑)。
馬淵 これはね、たまたま店の若い女性販売員の方に「お客さんお似合いですよ」と言われて、なんとなく買ってしまったんですよ(笑)。
井形 スーツはどこでお買いになるんですか?
馬淵 まとめ買いですね。時間が空いたときにぱっとデパートに行ってまとめてワイシャツ買ったりとか、あと、オリンピックとかで安い靴をまとめ買いするんです。
井形 うそぉ。馬淵議員がディスカウント店!? そういうときって秘書ヌキで一人で行くんですか?
馬淵 そりゃそうですよ(笑)。最近はコンビニでガム買って、バレてないなぁーと思ってたら、最後にお金払っておつりもらうときに「がんばってください」と言われたりして(笑)。ひえーって。
井形 もし3日間休みがあったら、何を一番したいですか?
馬淵 子供と、遊びたいですね(笑)。
井形 お子さんと何をしますか?
馬淵 えーっとね、ホントに時間ないときは夜寝るときに布団の中でお話しするんですよ。作り話、おとぎ話を即興で考えて話す。あと、外で子供とサッカーしたり、キャッチボール。下の子が自転車乗れるようになったんで、一緒に乗ってあげたいなぁって。
井形 一人になりたいと思ったことはないですか?
馬淵 んー……人間っていうのは生きてる間、やっぱり一人じゃないですか。僕はそういう思いがいつもあって。最後の最後は自分で決めていかなきゃいけない、いつも一人だと。だからこそ、家族が常にまわりで守ってくれているんだってね。
井形 では、東京の一人暮らし、淋しいですか。
馬淵 それは……すごく淋しいですね。
井形 いつ一番淋しいとお思いになりますか?
馬淵 夜、部屋に帰るとき。テレビ電話で子供を出してって頼むんです。彼らが起きてる間は出てくれて楽しいんですけどね。この前、夜遅くに電話したらみんな寝てましてね、(テレビ電話の画面に)暗闇の中の女房の顔がボオッと浮かんできまして。「お前コワいな!」って言ったらもうカンカン。夜中かけてきて「コワいな」って言ったもんで (笑)。
井形 たたき起こされて、怒りますよ、そりゃ(笑)。ところで馬淵さんの血液型は何型ですか?
馬淵 B型だと思います。ちゃんと検査してないんでわかんないんです。注射が苦手でね。一回献血行けって言われましてね、注射の針いややなーっと思って(笑)。怖いものは医者と幽霊なんですよ。井形さん、『シックスセンス』ってごらんになったことあります?
井形 途中で寝ちゃった映画ですね。
馬淵 いやーもう、私は後悔しました。奈良の事務所がビルの6階なんですが、一人で最後までいて帰るとき、電気消すと真っ暗になるじゃないですか。『シックスセンス』に出てきた幽霊が出てくるんじゃないかって……。だから電気消して出るときはいつも歌を歌って……。真っ暗ですからね。
井形 意外ですね(笑)。じゃあ、ひとりで議員宿舎に帰ったら、真っ暗で怖いんじゃありません?
馬淵 いやー……それが実は、タイマーで(点灯)セットしてて、帰る時は(電気がついていて)明るいんです(笑)。
日本の危機は
政治家が価値観を
語らなくなったこと
- 井形 もし、総理大臣になれるという可能性が出てきた場合、なりたいと思いますか?
馬淵 ええ。僕はずっといろんな会社の経営もやってきたんですけど、「有事の人だ」とみんな言うんですね。会社がつぶれそうになった時とかに必要とされる人間と。
井形 会社を救済したり?
馬淵 ええ、立て直したり、自分は有事のときにこそ力を発揮できるので、ひょっとして、この国で野党が政権を持たなきゃならないという「有事」が発生したときに、僕がたまたま責任ある立場にいたら、その場面がくるかもしれないなと。
井形 そうですね。
馬淵 ……ただ、右肩上がりで、(国が)安定しているときには、僕じゃなくていいと思うんです。
井形 馬淵さんは経営者として実社会のことも分かっている。そういう方が苦境では絶対必要ですよね。今、日本は有事だとお思いになりますか?
馬淵 完全に有事ですね。今、価値観を政治家が語っていないんですよ。国のリーダーが日本ではどういうものを大切に生きていけばいいか、何を信じてどういう社会を作るのか言わない。子供のみならず大人までが何を大事にすべきなのか見失っている。
井形 言えないんでしょうね。
馬淵 いえ、わからないんでしょう。小泉さんは盛んに改革と言いますが、あの改革というのは壊すことだけ。壊したあとにどういった国を作るのかについてひとつも語っていないですよ。
井形 そこが最大の欠落ですね。
馬淵 ねぇ、僕はね、子供を6人育てながら、「何を大事にしなさい」(と言うべきか)そればっかりをいつも考えますよ。
井形 なんですか、それは……?
馬淵 ルールの中で責任を果たす、逃げない。
井形 それ大事ですね。
馬淵 そのうえで、「自分ばっかり」という言葉をはいたときにはすごく僕は怒ります。「自分ばかり、なんでいろいろやらなくちゃいけないんだ」じゃなくて、できる人がやってあげる、でないと回らないんですよ。何が足りないばかり言うなと。
井形 なるほど。あと、政治って数の論理ですよね。馬淵さんをまわりで固める人がこれから必要ですよね?
馬淵 それは僕、よく言われるんですよ。たとえば民主党の若手議員の中では、いち早く仲間を作るため、飲んだりする。でも、そういうのをくだらねーって思う。そういうことをやるぐらいだったらね、一人でも、永田町の世界ではない人に会いたい。
井形 よく分かります。
馬淵 それこそ、井形さんのようなお仕事をされている方とか、いろんな方からいっぱいエッセンスをいただく。そうすることで共感を得られる政策ができれば周りに人が集まり、自然と形になっていくはずですよ。耐震強度問題で僕が前面に立って進んでいったときに、いろいろと危ない目にもあったんです。でも、メール送ってくれたり、電話してくれたりして励ましてくれた仲間はいる。それがグループになるかは分かりませんけどね……徐々にね……ほんとに、天命がある政治家なのだとすればね、自然と人が集まってくるはずです。
井形 これからもぜひ、馬淵さんの言葉で私達の疑問を解明して下さい。今日はありがとうございました。
|