頬をつければ、ひんやりと気持ちいい夏の壁。そして冬はほのかに暖かい、居心地のいい家。その誕生から処分まで、長いスパンですべてが自然から生み出される『土壁』を、今こそ知ってほしい。
末満工務店 末満廣行社長 「地球を動かし生命を育てる海こそが我々全体を動かしている。海が元気になるよう一人ひとりが働きかければ、人間も元気になっていくのです」。環境に優しく、水と調和する土壁の家づくりは、私たちの住まう星そのものも健康にしていく。
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土壁でつくる表情豊かな家は、人にも地球にも優しい 自然のチカラと生きる私たちの原点がここに
土のぬくもりを感じられる家に住む。それは人間にとって最も幸福な住まい方であろう、と「末満工務店」の末満廣行社長に『土壁』を用いた家づくりについて聞いたとき、確信した。環境に優しい自然素材が生きている土壁は、人間も地球も健康に、本来の姿に立ち戻った状態へと導くのだ。現在、多くの家をはじめとした建物が、石油に塗り込められて、シックハウス症候群を引き起こすなど、不自然なほどに人にも環境にもダメージの大きい施工のされ方をしている。油と水が馴染まず、海の汚れへと繋がる。早くそのことに気づいてほしいと切実に願い、それを伝える時期に来ていると悟る末満社長は、左官職人として伝統の技術を追求し続ける中で、土壁の魅力に出会った。
それは、土と藁を原料とする自然素材で、水と馴染み、化学物質などは含まれていないこと。土探し、水との調合、色合いを研究、自宅の壁を土壁に変えて、その底力を実感した。まず触れてみてほしい。夏はひんやりとして住空間そのものが涼しく、冬はそのぬくもりによって暖かい、という土本来の性質。土は生きていて、変化していくのだ。この愛しさを多くの人が感じられるよう、土壁の家づくりを目指し、塗りの技術も習得する。壁のみならず、内装は天井、フロアまで手掛ける技。200年、300年も長持ちする家だという。もし取り壊すことになっても、自然に還るためゴミも出ず、処分場も必要ない。まさに元祖・エコではないか。それに加え、日本の気候風土に最適なように湿度が調整される効果もあり、エアコンに頼らない清々しい生活が実現する。この呼吸する壁には防火性能もあり、万が一の火事でも一酸化ガスが発生しないという安全性を持つという。さらに、カビやダニの繁殖や結露などを抑制するだけでなく、ホルムアルデヒドやニオイも吸収。人間が人間を苦しめるアレルギーの不安から解放する効果も期待されている。現代に求められる住居の答えがここにあるといえよう。
末満社長は、人間としてナチュラルな暮らしを送れる、イギリスのぬくもりある家にも注目している、と話す。土壁は日本のみならず、ドイツ、ノルウェーをはじめとして世界中からラブコールが絶えない。土という、穀物を育てるチカラのあるものを住居とし暮らすということ、それ以上の贅沢はないと語る末満社長。それは、体にとっても心にとってもこの上ない喜びではないか。土を材料とした芸術作品、土壁アートを創作し、土壁そのものの魅力と可能性を私たちに伝えているその手が、方向を示してくれているのだ。
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