医療現場や生産ラインなど、様々なところで活躍しているレーザーシステム。この性能の決め手となるのは光路の長期安定性だ。つまり、安定性の高いミラーマウントを選定することで、レーザシステムの安定化をはかることができる。そこで紹介したいのが、「ファーストメカニカルデザイン」(通称:FMD)の高性能ミラーマウント『MM1000S』。野口康博社長(FMD)が設計された物をベースに古澤明教授(東京大学)・青木隆朗博士(現Caltech/元東京大学)・政田元太博士(玉川大学)・井口朗氏(KSオリンパス)と共同で開発されたコラボレートモデルで、特許も取得している。この製品の最大の特長は、信じられないような細かい調整ネジ(ピッチ0・15mm)と抜群の長期安定性だ。
これまでのミラーマウントは調整の際に微妙な調整がしづらく、せっかく調整しても僅かな変化が起きてしまうものが多いので、これが実験者たちにとって悩みの種だった。こうした問題に対応すべく『MM1000S』には「M-Ring」(特許出願済み)と呼ばれる新機構が組み込まれた。この機構を搭載することによって、調整ネジのラジアル方向のバックラッシを無くし、調整のしやすさや長期安定性は飛躍的に向上した。試作モデルでは調整当初からVisibilityは安定し、16日間以上経過しても全く調整が狂わないという驚異的なパフォーマンスを実現させた。量産モデルにもホームページに掲載されている評価装置で取得した個々のデータが添付されて納品されるので安心して使える。
最後に、開発者の主要人物である古澤明教授は次期ノーベル賞の呼び声も高い人物であることを付け加えておく。NHK「プロフェッショナル|仕事の流儀|」で紹介されたこともあり、量子コンピュータの基礎研究の第一人者。1998年に世界で初めて決定論的量子テレポーテーション実験を成功させ、2004年9月には世界で初めて3者間での量子テレポーテーション実験を成功させている。
トップランナーたちによって開発されたミラーマウント『MM1000S』。レーザーシステムのさらなる進化において、大きく貢献してくれるだろう。
(ライター/近持千裕)
32個で構成された干渉計での評価データ。
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