本物の技術は住宅不況にも負けない
リーマン・ショックを皮切りに荒波が押し寄せる不動産業界だが、確かな腕と信念を持ってこの恐慌に立ち向かう技術者たちを紹介したい。
福岡県郡山市に軒を構える「ホームクリエイト」は、なんと2007年の8月に設立された建築施工会社だ。この設立時期に刮目していただきたい。そう、リーマン・ブラザーズの破綻のきっかけともなった、サブプライム問題がちょうど騒がれだした頃と重なっているのである。
「私自身、現場監督をやっておりました建築会社が難しくなってきた時期でした。しかし、地元の不動産業者の方々のご支援もあって、新たに会社を設立するに至ったのです」
そう語るのが、地元・福島随一の腕を誇る職人として知られる、代表の村上清氏だ。建築産業に寒風吹き荒れる中、その施工のスピードと正確さに地元の信頼を勝ち取り、今では地域の住宅施工の大半をまかされる有力建設事業所となった。
とはいえ、一物件に大金が動く不動産業界の中で信頼を勝ち取ることは一朝一夕でできるものではない。長年の地域貢献の賜物だということが、村上氏の言葉の節々から聞こえてくるのである。
「つくるものに『心』を込めること。これが、私が常日頃気をつけていることです。技術ばかりあっても、心が伴わなければ良いものはできません」
そう語る村上氏は、中学卒業後の15歳の時に大工へ弟子入り。当時はほとんど現場で技術を教わることはなかったが、兄弟子や親方から技を盗みながら、仕事が終わると夜間の専門学校に通い5年間修業した。その腕は当時から大変評価が高く、20歳の時には技能オリンピックで福島県代表になったほどだというから、当時からその腕が折り紙付きだったと容易に想像できる。その後も、お宮の修繕などにも携わり、独学で宮大工の技術も学んだ。今では和装の家具も自ら手がけ、安価に施主に提供しているほどだ。
そんな、何十年もの経験を積んだ村上氏から放たれる言葉が、「技術より心」なのである。この言葉に、この大不況時代にも仕事を続ける「職人」の秘密を垣間見た。
建築の現場にも「顔が見える」サービスを
サブプライム問題をごく簡単にまとめると、住宅を一生モノと考えずに、安易な収支計算で住宅を購入したことが原因で起きたといえる。そこには、住宅に対する「心」が抜け落ちているのではないだろうか。買い手は自分が実際に一生を過ごすことを、売り手は、買い手の一生を左右する買い物であることを、まったく考えずに商売した結果が、現在の混乱を招いているともいわれている。
そんな中、本当に生き残こることができる建築会社があるかといえば、本物の技術と、それを裏切らない誠実さを持った建築会社であることは間違いない。
「私たちは大きな会社ではありませんが、その分、お客様と施工者である私が直接打ち合わせをいたします。それが、きめ細かいメンテナンスサービスにつながっていると思います」
普段から「すぐに仕事に行けるように」と作業着でいる村上氏は、そう話してはにかんだ。そんな謙遜の中にも、24歳の若さで新築一戸建てを任された経験のある、自信と責任感に裏打ちされた職人の眼差しが光る。食品にしろ住宅にしろ、「顔が見える」のが一番だと改めて感じさせてくれた。
「私たちは、あなたの夢を形にする職人集団です」
「ホームクリエイト」のHPのトップには、この言葉が掲げられている。最高の技術がありながら、常に謙虚な姿勢を崩さない。本物の日本の職人だからこそ、この時勢でも地元から愛されるのである。 |