コンパクトカメラや一眼レフカメラ、そして携帯電話用と、カメラは時代と共に小型化が求められている。それに加え、新機能の搭載が、各メーカーの競争ポイントになってくる。現在、カメラ付き携帯電話にも付いているズーム機能やオートフォーカス機能は、初期のカメラには付いていなかったもの。これらの機能の駆動装置となる「アクチュエータ」を小型化することによって、初めて搭載されるようになったのだ。手ブレ補正機構や絞り制御機構などの精密さが必要な駆動にも用いられる「アクチュエータ」。その小型化と精度向上がカメラの将来を変えると言っても過言ではない。
高精度・低電力・低コスト
を実現
そこで、コンパクトデジタルカメラ、ビデオカメラなどのフォーカスを作動させる機構に活用できる、小型『リニアアクチュエータ』を開発したのが、「アクチュエーターデザイン」だ。光学業界最大手の企業の主要製品を大きく進化させることになる。これは、対向部材の平行移動機構を用いたもの。小型化しても加工が容易な構成であり、高度な直動精度を得ることができると注目されている。
従来の直動機構は、コンパクトデジタルカメラのフォーカスを行うためのレンズを前後させるときなど、ステッピングモーターにより駆動させていた。動作にはガイドが必要で、ガイドのガタによる精度低下、ガタ対策による高コスト化、摺動による電力の損失などが生じて、欠点が多かった。このアクチュエータは、転動機構のみで構成されているため、摺動部がほとんどない。摩擦によるメカ的な損失の極小化により、低電力で、ミクロンmオーダーでの制御可能なほど高精度に、レンズを直動させることができるのだ。また、構成部品が少ないため、従来品より低コストで作製することができるのも利点である。
さらに、球体の真球度、溝などの球体接触面の平滑度や、平行度等の加工精度は、従来の技術でも充分に確保しやすい。3個以上の磁性球体を溝に係合するか、または部材管に介在させるのみであるため、とても容易に組み立て作業ができるのもポイントだ。
また、位置センサを含めてアナログ動作のため、高速動作と高精度が両立する。絶対位置制御のため、イニシャライズは不要だ。これらの性質を活かして、レンズ以外の用途も考えられる、可能性に満ちた技術なのである。
幅広い市場が求める技術
デジタルカメラのフォーカシング機構をターゲットに開発したこの技術は、主な顧客として大手総合電器メーカー、レンズメーカーなど幅広く求められている。また、その高速静音動作、アナログセンサーによる高分解能絶対位置制御、小型低価格などの特性から、試作結果からも測定器としての性能が十分にあると考えられ、光学測定メーカーからも期待されている。これにより、デジカメをはじめとする市場の規模拡大、この発明の製品シェアおよび売上高の伸びが予測されているのだ。
低コスト・低損失・高精度を徹底的に追求した技術者のスピリットが、ビジネスチャンスを広げていくだろう。
(ライター名/中村美奈子)