サブプライムローンが世間をにぎわす中、不動産相続による多額の債務に苦しむ人々や、不動産を巡る家族間の不和、住人と管理人の争いなどのトラブルを一手に担う「フジネットサービス」がクチコミで話題を呼んでいる。不動産問題に絡む、欲と法律の狭間に長年立ち続ける佐藤正和氏にお話を伺った。

不動産トラブルを解決し人々を救うという仕事
「日本は資本主義国家であり、また法治国家でもあります。しかし、弁護士や会計士でも解決できないのが『不動産トラブル』というヤツなんです」
　こう語るのは、東京を拠点に不動産問題の解決のために全国を奔走する「フジネットサービス」の代表、佐藤正和氏。不動産の財産分与や借地権の争い、不動産売買などを一挙に引き受け、経営難の事業主や借金苦の家族に代わって解決に導く「その道のプロ」だ。
「不動産というと、みなさん『難しい業界』と距離を置きがちです。確かに不動産には税法や民法が複雑に絡み合い、専門的な知識がなくては扱えるものではありません。しかし、住居や店舗、事業所など、実際に不動産に関わるのは一般の方々。知識がないため、いざというときに、大変な事態に巻き込まれてしまう方は非常に多いのです」
　家賃の滞納や土地売却の際の税金問題など、実際に起こってしまうと対処の仕方が分からないもの。そんなときに相談する窓口が、今の日本には不足しているのではないかと指摘する。
「遺産相続では、まず相続税がかかります。そうなると、税理士に相談しなくてはなりません。また、相続遺産をめぐって家族が対立したなら、弁護士を呼ぶ必要があります。さらに、相続遺産の不動産を売却するということになったら、不動産仲介業者とも付き合わなくてはなりません。こうした方々をコーディネートするためには、やはりある程度の法律知識が必要になるのです。私は不動産の専門家として、『法的常識』の観点から税理士や弁護士と連携し、一般の方への窓口として、不動産トラブルの解決にあたっています」

もっとも難しく、相談が多い相続専門家でもできない「解決」への道とは
「不動産トラブルで、最も相談が多いのが『相続』に関するもめごとです。たとえば、相続遺産を売却するか、あるいは残すかという問題は、資産家や大地主さんのご家庭にはつきもの。兄弟の間で不一致が起こり、何年も絶縁状態になるというのも良くある話なのです」
　土地や建物というものは、単に金銭的に高価なものというだけでなく、立地、形やデザイン、そして「思い出」といった、どこにも同じもののないユニークな「商品」。どうしても残したいと考えたり、逆に売却して自分の借金返済にあてたいという人もいる。一度こじれると何年も議論が平行線を辿り、最悪には絶縁状態になることも。
「こうした場合、弁護士や税理士と法的なチェックをしながら、その土地の適正価格や新しい利用方法などを考慮に入れ、双方納得できる結果を目指します。相続が解決しない理由は、当事者一人ひとりが、できるだけ利益をとろうとするためなのです。相続の『解決』とは、すべての人の立場を考慮した結果を残す、途方もなく難しい作業なのです」

自らの経験から相続と家族の影を断つ
「不動産トラブルを解決する特効薬はありません。法律と折り合いを付けながら、その人や家族が納得できる方法をその都度考える必要があるんです」
　佐藤氏が関わってきた案件の中には、３年間、一つの家庭の話し合いを続けて解決に導いたものもあるという。その情熱の根底には、自ら相続問題に陥った経緯も関係している。
「私自身、家族の相続問題で実の兄弟とのトラブルを抱えてきました。その経験の中で、『人間としてどう生きるか』を、トラブルを抱えた方々と話し合うんです。血を分けた家族がそれぞれ思惑で動かず、お互いの立場を考え合えば、解決できないことなんてないはずなんです。法律に乗っ取って、家族がお互いのために行動すること。一つの問題を解決しようという意志が、一番大切なのではないでしょうか」

いつの間にか巻き込まれる負債という相続から身を守るために
　数々の案件を追う中で佐藤氏が見てきたものは、一般の人々の「法的常識」の希薄さだった。「相続放棄の手続き」を知らないがために、数十億の借金を抱えてしまった例もあるという。
「実際、不動産に関する法律さえ知っていれば、回避できる問題は多いのです。負債などの財産にしても、相続放棄や限定承認手続きなどを利用することで、ご自身の財産を守ることができます。相続に関して右も左も分からないという方は、まず、市役所などの法律相談を利用されてはいかがでしょうか」
　たとえあなたが相続遺産に興味がなくても、相続遺産があなたを巻き込むことがある。家族と自らの暮らしを守るために、不動産と法律、この２つを少し、身近にしておきたいものだ。