衛生的で旨味が濃縮され、省エネ稼働の『乾燥革命』は、21世紀の食材開発に欠かせないものとなるだろう。ステンレスセイロ式とエビラ式がある。
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不揃いの野菜や果物が
栄養価の高い加工食品に変身
ちょっと歪んでいたり、キズがあったりする野菜や果物。大抵の場合、店頭に並ぶことなく廃棄処分されているのが現状。これらは、いわゆる〝規格外品〟と呼ばれるもので、農産物のなんと40~60%に当たるのだという。食料自給率41%の日本にあって、何だかもったいないことをしているのではないか?……と、そこに注目したのが岐阜県美濃加茂市に本社を置く「八尋産業株式会社」の代表取締役社長の大矢正昭氏だ。
1977年に同社を創業して以来、農業の産業化に努め、農業従事者の所得増、そして消費者と生産者のネットワーク作りに尽力してきた大矢さんは、「農産物には、規格外品の他に、未成熟品など未利用農産物がたくさんある。これを無駄にしてしまうのはもったいない。商品化すれば1兆円産業になる」と取り組んだのが、大矢氏自身が1984年に開発した『乾燥革命』を使った減圧平衡発熱乾燥法。いかめしい名前の方法だが、乾燥庫内を減圧して水分が蒸発しやすい環境を作り、減圧用ファンから発生する熱を乾燥庫内に循環させて乾燥をさらに進めるという方法で、熱風乾燥に比べて操作が簡単で安全。また、乾燥する材料の成分変質や劣化が少なく低温のため発酵温度帯で旨味など品質が保たれるというメリットがあり、さらには電気代も安いという特徴も……。農家の人は、暇な時に機械を稼働させて加工品を作ることが可能というわけ。ところが「農家は加工品を作ることはできても、売る手立てがない。そこで私たちがお手伝いするというわけです」という大矢氏の志と、農家との信頼関係、協力関係が成り立っているこのビジネスモデルは今、多方面から注目され、全国に広がりつつある。
(ライター/深井みさわ)
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