同社には、機械の姿はほとんどみられない。それほど職人の腕に自信をもっている。
|
職人による熟練の技でしか生み出せない
全国で唯一の超ミクロン金物加工技術
今最も注目され、ニーズが高い電化製品といえば「液晶テレビ」。その製造過程において欠かせない「艶消し」のための金物加工において超微細加工技術をもつ「棚澤晩翠堂」を取材。驚きの職人技をご紹介しよう。
明治44年創業。大蔵省印刷局でお札を作るためのエッチング加工から独立し、現在は自動車、建設、半導体などの分野で幅広く技術提供を行ない、厚い信頼を寄せられている『棚澤晩翠堂』。同社が施す金型へのミクロンオーダー特殊エッジング加工技術は、業界唯一のオンリーワン技術で注目を集め、全国の様々な業界から注文が殺到している。ここでいう「金型」と結びつくものが今最も普及されている液晶テレビ。液晶テレビの大きなメリットとして、目にやさしく疲れにくいということがあるが、これは表面に細かい凹凸を作って光を乱反射させ、反射させる光の加減を調節する「艶消し」という仕組みによるもの。この作業を「金型」をもって加工する技術において、同社は他の追随を許さない精度の高さを誇る。というのも、この金型は5ミクロン以内という想像を絶する緻密な加工。1000分の5ミリ以下というミクロンオーダーの超微細加工ができるのは全国でも同社だけという貴重な技術だ。その作業を行なっているのは、さぞや最先端の機械かと思いきや、何と全て職人集団による手作業なのである。なかには機械で測定しきれないほどの精密測定加工もあるようだが、長年培った勘と技術で見事にこなしてみせる熟練の技には圧巻。現在社員は19人だが、そのうち15人がこの類まれなる技術をマスターする職人というのも頼もしいかぎり。金物に繊細な加工を施し、出来上がったゴムや合板、プラスチック製品の表面に凹凸をつけ、多彩なデザインを浮き上がらせる。このデザインにも、さらなる複雑な加工技術を高めたいと棚澤社長は意気込む。 最先端の技術といえば、今やそれは最先端の機械がもたらすものになってしまった。しかし、日本人が世界に誇れるものは、勤勉な精神に基づくクオリティの高い職人による技術だったはず。日本の産業は、もう一度原点に立ち戻って同社の『人材は人財』の精神を見習わなければいけないのかもしれない。職人同士が互いに切磋琢磨し合って更なる高い技術を生み出し、それを次世代の若い職人に受け継がせていく。同社が力を入れて取り組んできた人材育成は、確実に実を結びつつある。守りに入ることなく優れた技術に磨きをかけ、新しい風を取り入れながら成長し続ける同社の「職人力」は、今後も日本の産業界を力強く引っ張っていくことだろう。活躍に大いに期待したい。
|