山手歯科クリニック　齋藤和重院長
当院では、最新の歯科治療機器を知ってもらうため無料でCT撮影を行なっています。また、ホームページから、インプラントのカウンセリングをスムーズに行なうための、メール相談もできます。治療後、インプラント体の5年〜10年間の保証システムがありますので安心です。


　書店を歩けば、時代の風潮を肌で感じられる。そこで見る前から、メディアなどで知っていたもの。反対に、全く知らず「へぇ、いまはこれが売れているんだ」と新たな発見をすることも醍醐味だ。いずれの場合も、棚から私たちに語りかけてくる本は、ページを開く前から、人を惹きつける何かがあるのだ。
　村上春樹さんの長編小説『１Ｑ８４（新潮社）』が2009年6月、第1・2巻で計106万部まで増刷された。５月29日の発売から12日目でミリオンセラーを達成し、作中の音楽や村上さんの過去の著作も売れ、『１Ｑ８４』は空前のヒットとなった。本書は、発売前の内容予告を一切しないことで、読者の興味を最大限に惹きつけ、発売自体が一つのミステリアスなイベントの格好になり、結果、品切れ店舗続出に。村上さんのファンのみならず、ジョージ・オーウェルを読む者を含む幅広い読者層が、分厚い上下巻を買い求めたことは、出版史上特筆すべきだろう。
　新潮社が2008年５月から発行している『日本鉄道旅行地図帳』が、2009年5月18日に発売された「九州」編で全12巻が完結し、１号の「北海道」編からの累積発行部数が135万部になったと、2009年5月20日に同社から発表された。この地図帳は、80万分の１で統一され、日本で初めてという正縮尺の鉄道地図として発行。全線、全駅、全廃線が収録されているこの本は全駅の開業、改称、廃業なども掲載して、鉄道を通しての日本の歴史的情報を掲載するとともに、駅弁などの観光ガイドなどを紹介した充実した内容となっているのだ。
　当初１号平均の発行部数を6万部程度としていたのだが、予想に反して２倍近いヒットを記録したのだ。「北海道」編はすでに6回の増刷を重ねているという。「薄く軽く、旅行に持ち歩き、車窓から見える山や川の名前が、その場で確認できる」手軽さからか、女性からも支持されその数は3割。このタイプの本は９割が男性とされ鉄道ファンが多いと言われているが新たな層（女性）を取り込めたのがヒットの要因かもしれない。あらゆるガイドブックがあふれる中、「地図」という存在で、ベストセラーを飾った底力。それは、斬新なアイディアを、使うものの視点で実現する、という姿勢にほかならない。未知の小説が、新たな手法で売られ、読者をわくわくさせる。地図というスタンダードなものを「こんなものがほしかった！」という満足度満点なものへ進化させる。書籍は、各々のもつ性格を知りつくした上で、少し視点を変えて世の中に発信したとき、人間の想像を超えるパワーを持ちうるのである。
（ライター／中村美奈子）