30mg 3,800円
(ライター/馬場紀衣)
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営業時間/8:00〜 定休日/1月1日〜1月4日
(ライター/後藤宏幸)
「株式会社東電通(とうでんつう)」に入社。NTT関連アクセス部門で通信工事の施工管理に従事。東営業所所長、EGW工事部長、取締役などの役職を歴任。「東電通」は同業大手と合併し「株式会社ミライト」になる。退職後、複数の電気工事会社から請われて2011年5月に電気工事業、電気通信工事業を業務とする『株式会社GNR』を設立し、代表取締役に就任。NTTやNEXCO(西日本高速道路)などから受注した電気通信や電気設備の工事をグループ会社に振り分け、事業を牽引してきた。
解釈推理に見えるエンジニアの視点
人生訓学び取る真摯な姿勢
探索の軌跡を地図にマーク
電気通信設備工事業大手「ミライト」を退職後、関連会社を束ね受注業務を調整し遂行する『株式会社GNR』を設立した千田明社長は、歴史に強い関心を抱き、エンジニアらしい探究心で名所旧跡を訪ねて造詣を深めてきた。伝統的な年中行事、由緒ある寺社仏閣、歴史に刻まれた名所や事象について調べ、見聞きしたことを写真とともに留めた記録は緻密で知識の深さを示す。探究の旅は、仕事の合間を縫って、今も続いている。
京都四大行事の一つ、「京都五山送り火」、いわゆる「大文字焼き」が2015年も送り盆の8月16日に行われるが、かつてこの行事を見物した社長は概要次のように書いている。
「祇園祭とともに京都の夏を代表する風物詩の一つ。この送り火としては東山如意ケ嶽の『大文字』が送り火の代名詞のごとくいわれていますが、ほかに金閣寺大北山(大文字山)の『左大文字』、松ケ崎西山・東山の『妙法』、西賀茂船山の『船形』、嵯峨曼荼羅山の『鳥居形』があります。妙法の送り火は地元の湧泉寺の日像上人が天台宗から日蓮宗に改宗したときが始まりとされ、舟形は西方寺開祖の慈覚大師が唐からの帰途に暴風雨に会いお経を唱え、無事帰国できたことから舟形になったと言われます。左大文字は京都の中心より左側あるため左大文字と言われ、江戸時代から始まったようです。 最後は嵯峨鳥居本にある鳥居形に火が入ると終わりになりますが、 鳥居形になったかは地名説、火の神を祭る愛宕神社の鳥居説があります。この宗教的行事が年中行事として定着したのは室町から江戸時代以後のことと言われ、古くは松明の火を空に投げ上げて虚空を行く霊を見送るという風習であったのが、 五山の送り火形態になったように思われています」
東海道五十七次調べが起点
会社OB会会報に随筆掲載
このように歴史を紐解き、自身の推理を加えながら実相にせまるだけではない。事象、事物から何かを学び取ろうとする真摯な姿勢が、エンジニアらしい克明な解説の行間に滲む。その一例が妙心寺内の東林院で沙羅双樹の花を愛でた時の「妙心寺を訪ねて」。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」で始まる平家物語に触れたその要旨。
「沙羅双樹はお釈迦様が入定されたとき、いっせいに花開いた仏教ゆかりの名木。沙羅の木が途中で分かれ二つに育ったもので、朝に咲き夕方に散りゆく一日花の人の世の常ならぬことを象徴しています。平家物語の沙羅双樹は、あれほど栄えた平家でも時代とともに変わりゆく無常感がこめられたものです。東林院には樹齢300年程の沙羅双樹があり、椿のような花の落ち方をしますが、人の一生もこのように簡単に散ることができたら素晴らしいなと思いました。無常とははかないことではなく、常がないこと。常に変化することをさします。沙羅の花は一日だけの生命を悲しんでいるのではなく、与えられた一日を精一杯咲き尽くしているのです。二度と巡りこない今日一日を大切にしなければならないこととつくづく感じました」
後白河法皇の信仰を一心に集め、国宝・三十三間堂で知られる蓮華王院を夫婦で訪ねてまとめた「蓮華王院を訪ねて」では、1249年の洛中の大火で消失後、1266年に再建された経緯に触れ、「地震の多い日本において、版築という工法(砂と粘土の層を何層も重ね振動を吸収する)を用い、何度か修復しながらも800年の歳月を耐えてきたことに古人の知恵に感心する次第です」と技術的な視点も忘れない。
京都祇園祭の山鉾巡業の名の由来や風習に触れた「祇園祭について」、平安京の地理的環境や場所を推定した「平安京」なども歴史を丹念に探る姿勢が鮮明だ。また大阪市中央区北浜にある「ミライト」民需部門の支店近くに東海道五十七次の起点とされる高麗橋があったことから、この旧街道に関心を持ち、旧跡を訪ね歩いた探訪記は「ミライト」社の退職者でつくるOB会の会報に掲載された。文献やネット上の情報などを頼りに大阪市内の東海道を経て京都まで到達したという。回ったところは一枚地図や道路地図にマーカーで記録しているといい、探訪記では、沿道に存在する史跡や歴史的建造物などについての史実やエピソードを紹介しながら、東海道にまつわる大阪の姿を描き、八百八橋と言われる大阪の橋について克明に解説している。