最近頻発する集中豪雨、直下型の大地震、ある日突然襲ってくる災害は、土砂崩れや土砂流を招き、緑の光景を一変させる。また、流れ出した土砂は雨が去った後も長く道路を塞ぎ、生々しく爪痕を見せつける。その被害を軽減し、一刻も早い緑の再生を目指すのが、建設技術展2010近畿審査員特別賞を受賞した『全天候型フォレストベンチ工法』である。これまでの斜面補強は、地表をコンクリートで覆う工法が一般的であったが、水や空気の流れを遮断してしまう、斜面が水の流れを加速させかえって洪水を招くなどの欠点がある。更には経年劣化により破損が生じるため、定期的なメンテナンスが必要になるなど、災害防御のはずが、実はマイナスの側面が多い。
一方、「全天候型フォレストベンチ工法」は、斜面を階段状に均し、垂直に立てた透水性受圧板を地中を貫通させたアンカーで引っ張る方式で、棚田状の水平面ができることが特長である。この水平面に植樹することにより、斜面の安定性を高め、降雨を地下に浸透させる効果をもたらす。また、水平面が雪崩防止効果を持ち、軽量で地震に対する耐性も発揮する。他にも、施工が簡単で工事期間を短縮できる、コストも抑制できるなど多くの利点がある。何より、緑豊かな景観を保つことができ、樹木が成長すれば、二酸化炭素の吸収による温暖化防止も期待できる。コンクリートに頼らず自然の力で自然を守る、新しいモデルと言えるだろう。
(ライター/小野領士)