読者が選ぶ売れすじ大賞 2010年度版

　
　気づけば様々なノイズが、現代を生きる私たちの日常を包んでいる。静寂の中に身を置いたり、穏やかな音色に身を任せることで、どれだけ安らぎがもたらされることか。ドイツの竪琴「ライアー」の音に耳を傾けたとき、どこか懐かしさをおぼえ、心身が開放されるのを感じた。
　ハープより小ぶりで、爪弾けばささやくような音色がこぼれる。ライアーの魅力を日本で広く伝えているのが、本誌編集部でも注目し続けている「ライアー・ゼーレ」だ。代表の小沼喜嗣氏は、ライアーを通してドイツでの音楽教育に長く携わってきた演奏家・仲正雄氏と出会い、「静けさの持つ力」をコンセプトに意気投合。仲氏がシュタイナーの治療教育機関で実践してきたことを集大成して発信している。
　その想いは、これまで発売した4枚のCDに込められる。すべて「光」をテーマにしながら、クラシックや童謡などの旋律に乗せて表現される喜びや悲しみに、身を委ねてみよう。
　１枚目『ヘンデル・バッハ…光の波紋』では、現代人の疲れた心に休息を与えたいという祈りを込め、本来チェンバロの和音で奏でられる曲を、ライアーの特徴を活かした伸びやかさで演奏。2枚目『光の歓び』では、誰もが口ずさめる童謡が、ライアー独自の和音で弾かれる。3枚目『光のゆめ』は、クラシックの名曲がライアーの余韻に導かれ、心の中に「魂の自由空間」を作ってくれる。4枚目『光のなみだ』は、悲しみから立ち直る人を優しく包み込むよう。2010年9月に5枚目『光の魔法』を、全部で７枚目まで発売予定だ。ライアーという楽器そのものもドイツから輸入していくので、ライアー教則本「ライアーで歌いましょう」で、あなたも自分の手で奏でてみては。
　2010年10月には全国ツアーで講演会、コンサートを開催。生音にふれるチャンス、楽しみである。
（ライター／中村美奈子）