日本が誇るビジネス大賞 2024

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太陽光発電パネルのリサイクル事業など
『GX』の数々の取り組みで社会的評価獲得

時代の要請見定め改革推進
廃棄物業界のイメージ一新


「改革すれば必ず有形無形のメリットがついてくる」
 宮城県仙台市で家庭ごみや産業廃棄物の収集処分を手がける『株式会社宮城衛生環境公社』三代目代表取締役の砂金英輝さんが自身で推進した改革から得た実感だ。改革は、「SDGs」の課題である脱炭素に向けた『GX(グリーントランスフォーメーション)』の取り組み。メリットは、企業価値、業界の社会的地位の向上を指す。『GX』の象徴が適正処理の強化に向けて環境省が検討を開始するなど時代の課題に浮上した使用済み太陽光発電(PV)パネルのリサイクル事業だ。
 砂金さんは、地球温暖化で脱炭素経営の重要性が増していくと直感し、自家消費型太陽光発電設備を導入。その関連で生まれた「寿命がくるパネルはどうするのだろう」という疑問に自ら出した答えが、埋め立て廃棄処理が主流のPVパネルのリサイクル。処理能力一日約100枚の『エコロジーセンター愛子(あやし)』を立ち上げ、2023年4月から操業を開始した。
 契約した発電事業者から有料で引き取ったパネルをアルミ枠分離機、強化ガラス破砕回収機、バックシート破砕機で分解、素材ごとに分別し、有価物として専門業者に売却されたアルミ枠、ガラス、金属などの素材が再資源化される。工場で使う電力は、自社PV設備と東北電力の水力発電由来のもので100%再生可能エネルギー。地産地消、循環型経済を絵に描いたような取り組みだ。このほか、営業用車両のハイブリッド車への変更、廃棄物収集車への 次世代バイオディーゼル燃料(サステオ)採用、効率的な収集業務ためのデジタル化によるCO2の削減、ペーパーレス化なども進め、『GX』の取り組み全体が評価され、「東北地域カーボン・オフセットグランプリ優秀賞」や「気候変動アクション環境大臣表彰」、さらには環境省の脱炭素ハンドブックにもモデルケースとして掲載、2024年度には「エコ・ファースト企業」として認定されるなど、企業価値の向上につながった。
「社会的地位が高いとはいえない廃棄物処理業界のイメージを変えたい一心で『GX』に取り組んできました。PVパネルリサイクルはまだ社会貢献の規模ですが、FIT(電力の固定価格買い取り制度)による買取期間が順次満了するのに伴い、PVパネルの廃棄量が大きく増加していきますので、ビジネスとして位置づけ、処理能力を拡充して時代の要請に応えていきたいと思っています」
(ライター/斎藤紘)

株式会社 宮城衛生環境公社
TEL/022-393-2216(代表) 
Eメール/mek@miyagi-ek.co.jp
ホームページ 
https://www.miyagi-ek.co.jp/

日本のインフラを支える事業を柱に創業
橋梁などの診断補修と農業活性化を支援

自身の経験に根差した事業
両分野の人材育成にも協力


 2023年3月に設立された『N-PRO.株式会社』代表取締役社長の細見直史さんは、「鋼部材のコンクリート境界部における腐食挙動と疲労耐久性の評価・予測に関する研究」で得た工学博士の学位を持つ理系出身の経営者だ。その専門知識を生かした事業が「インフラ事業支援」だが、もう一つ、「農業に関するコンサルティング業務」も事業の柱に掲げる。この二つの事業、外形的には異なる分野だが、いずれも細見さんの経験に根差すもので、精緻な思考回路の中では有機的に繋がり、「日本のインフラを支える事業」と位置付けられたものだ。
 その経験は、生い立ちにさかのぼる。細見さんは、兵庫県丹波篠山市の農家に双子の兄として生まれ、父親の手伝いを通して農業を経験した。同時に地域にあった橋などの構造物にも関心も持ち、大学に進学して建設工学を学んだ。卒業後、「東京鐡骨橋梁(現・日本ファブテック)」で経験を重ねる中、父親が急逝、家業を継ぐか否かの選択を迫られ、考えた末に選んだのが農業を弟に任せて、自身は違う形でサポートする道だった。この経緯から生まれたのが二つの事業だ。
「橋梁などの構造物も農業も国土を守る大切なインフラとして当たり前に存在していますが、これらを支えてくれている方々に感謝して生きていく社会にしたいというのが事業に込めた思いです」
「インフラ事業支援」は、鋼構造物の腐食要因調査・診断、鋼構造物の疲労損傷調査・診断、鋼構造物の変形・応力調査・診断、鋼構造物の応急補修処置など。「農業事業支援」は、農作物の販売促進に向けた企画・調査によるニーズ分析と情報の発信、地方の気候や地形、土壌の特異性を活かした農作物のブランド化、小規模農業におけるスマート農業に向けた施策、農業廃棄物の再利用による循環型農業に向けた施策の支援など多岐にわたる。細見さんはまた、インフラ構造物のメンテナンス業界の若手技術者の人手不足、農業人口の高齢化と後継者不足が深刻化する現状を危惧し、両分野を対象にした「人材教育事業支援」を事業の第三の柱に据えたほか、農閑期に農家の臨時収入になるよう地域の市町村の土木課や農業課がタイアップして、橋の調査や点検を農家に依頼するというこれまでないビジネスモデルで地域活性化に寄与する構想の具体化も視野にいれる。
(ライター/斎藤紘)

N-PRO. 株式会社
TEL/03-6890-3967 
Eメール/HPのお問い合わせフォームより
ホームページ 
https://n-pro-co.com/

IT技術で果樹農家の伝票作成を肩代わり
独自開発のソフトとIT導入補助金を利用

集客のタイミングを逃さず
優れたコストパフォーマンス


 桃、ブドウの日本一の産地、山梨県の果樹農家から支持を得ているサービスがある。実家が農家で農繁期の伝票作成作業の苦労を目の当たりしてきたITシステムエンジニア、『株式会社ガンズシステム』代表の岩間崇さんがその苦労をIT技術で肩代わりする『配送伝票代行サービス』。利用するのは、岩間さんが開発した果物配送伝票印刷ソフト『ももっちい』。生産性向上を目指す農家や中小事業者を対象にした経済産業省のIT導入補助金が利用できるので、サービス料金の負担も軽減されるという、願ってもないサービスだ。
『ももっちい』は、品物や届け先などの登録、運送会社ごとの配送伝票の作成、伝票一括印刷、宛名シール印刷、はがき宛名印刷など多様な機能を持つソフト。『配送伝票代行サービス』では、農家から受け取った顧客データを岩間さんがパソコンで入力、プリンタで配送伝票を印刷し、販促用のチラシやダイレクトメールの作成も代行する。料金は初年度の費用3万円、それ以降は年1万円で、初年度のデータ入力500件、それ以降毎年20件までは無料。無料分を超えた場合は1件に付き50円、配送伝票は毎年1000枚まで印刷する。
 岩間さんは、パソコンを使って自分で印刷したい山梨県笛吹市近隣の農家向けに『ももっちい』を設定サポート付きで5万円で販売、ここでもIT導入補助金を利用すれば、4分の1の12500円で導入することができる。岩間さんは、補助金申請も支援する。
 岩間さんは農家支援業務とは別に、山梨でIT技術者を育てる活動にも力を入れている。岩間さんが代表理事を務める『NPO法人New Way Joint(ニューウェイジョイント)』の「山梨シリコンバレープロジェクト」。IT技術者がお互いに助け合いながら心技体を整える活動を通じて仕事を順調に進めて行くための基盤づくりを支援する活動で、クラウドファンディングを利用したイベントの開催を2024年1月13日に行った。
「ITエンジニアは、フリーランスや会社勤めでも残業が多くストレスがたまりやすい」と指摘し、癒しを提供する交流の場を提供している。今後は、投資家との交流会や婚活イベントも計画している。
(ライター/斎藤紘)

株式会社 ガンズシステム
TEL/090-7705-9350 
Eメール/t-iwama@gunssystem.com
ホームページ 
http://gunssystem.com/

養豚の悪臭・水源汚染対策の決め手
有用微生物で排尿を浄化する特許技術

排水基準を下回る浄化
小さな初期投資で効果


「豚などの畜産動物の排尿を処理する排尿処理方法」
 母豚を常時160頭飼育し、年間3500頭を出荷する『野口ファーム』の代表野口昭司さんが養豚に伴う悪臭公害や水源汚染の対策を研究する中で開発、日本と中国で特許を取得した技術だ。有機物を分解する有用微生物群EM菌を利用するのが特長で、養豚場で処理に困る排尿を水質汚濁防止法の基準をクリアして河川に流せるほど浄化する効果がある一方、手づくりで設置可能な上、初期費用は既存処理施設の10分の1程度で済み、小さな投資で大きな効果を生む排尿処理方法だ。この方法の仕組みは、養豚場内の空き地に穴を掘り、ビニールシートを敷いた2個の水槽と、排尿を集めて、EM細菌と共に第一処理槽に導き、水中エジェクターポンプで攪拌させて尿の初期浄化を進行させる第一浄化工程、この初期浄化尿と槽内の浮遊汚泥を第二処理槽に導き、水中エジェクターポンプで攪拌させ、EM細菌を増殖させて尿の最終浄化を進行させる第二浄化工程、最終浄化尿を取り出す浄化尿排出工程とから成る。EM菌は、培養水と糖蜜、水道水を熱帯魚を飼育するサーモスタット付きの水槽に入れ、その周りに水を張り36℃に設定、4日間で培養液が完成する。浄化した後の排尿の検査では、生物化学的酸素要求量が基準の16分の1、窒素含有量は5分の1と水質汚濁防止法の排水基準を大幅に下回った。『野口ファーム』では近くを流れる常陸川に浄化した排尿を放流しているが、その排水を測定した最新のデータでは、BOD生物化学的酸素要求量が基準の160ppmに対し10ppm、窒素含有量は120ppmに対し24・9ppmと放流基準より驚くほど低い数値だった。
「排尿処理槽はユンボなどの一般的な掘削用の建設機械と防水施工されるシート地の組み合わせで簡単に形成することができます。施工コストは処理槽がコンクリート構造物で地中深くに埋設された本格的な浄化処理施設の場合、数千万円単位の高価なものとなるのに比較して、発明技術の場合、約10分の1の350万円から400万円程度で済みます。また、廃業などの際もシート地を剥がして窪地を建設機械で埋め戻すだけ。処理槽に沈殿した汚泥は液肥として再利用することもでき、畜産を環境にやさしい産業にすることができます」
野口さんは、この処理法を養豚業が盛んな国に普及させるのが夢だ。
(ライター/斎藤紘)

野口ファーム
FAX/0299-92-3167

関わった方すべてを笑顔にする
一熱血社員の様に内部から本気で改善

銀行側からの視点を理解
企業の成長に貢献


「あなたの右腕になる」をコンセプトに、クライアント企業の社員と同じ目線で行う経営や財務面、事業継承のサポート、Webを活用したマーケティングなど事業運営における様々なサービスを提供する『株式会社エクシードコンサルティング』。代表の山下普之さんは、メガバンクに11年間勤務し、銀行融資や法人企業のコンサルティングを経験。銀行では業績が良い企業には融資を勧めることができるが、本当に踏み込んだサポートが必要な企業に積極的なアプローチをすることができず、ずっと歯がゆさを感じていた。
「決算書などで表面上だけをみると、こんなに赤字で大丈夫なのかと心配になるお客様もいらっしゃいます。私たちは、企業の内側を見て判断するので、銀行では融資できないと判断された場合でも全く問題ない、むしろ再生できるとの判断ができます」
 企業と一コンサルタントという関係ではなく社員のように内部に入り込み、席を用意してもらって社員と同じ空間で仕事をすることもある。社員と同じ方向をみて一緒に汗を流して壁を超え、熱い想いを持って取り組むため、信頼関係は強固になる。
「経営サポートを行っていた愛知県の老舗メーカーさんは、サポートを進めるうちにオーナーから後継者がいないという話をお聞きして事業継承者を探しました。1年半ほど一緒に探してM&Aのサポートも行いましたが、先方のオーナーから私が理想なんですといわれ、そのメーカーを引き継ぐことになりました。珍しいケースですが、コンサルタントとして信頼していただいた結果かなと思っています」
 表面上の決算書だけの判断では、企業の売却は難しいレベルだというが、山下さんから見れば十分再生できると判断して引き継ぎを決めた。日本の伝統技法でつくるメーカーは、現在2社のみ。引き継いでしっかり再生していくことが、日本の伝統技法を守ることにも繋がる。また、ホームページやPR動画制作などマーケティングのコンサルティングも行い、ホームページやPR動画を納品したあとも関係を続け、ケアし続けることを重視する。企業としっかりと信頼関係を築き、社員と同じ目線、熱量で寄り添いながら関わるすべての人達が笑顔になるよう経営から財務、事業継承、マーケティングまで丁寧なサポートを行う。
(ライター/彩未)

株式会社 エクシードコンサルティング
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特許認定された『ワンコインエンジニア』
プログラミング学習アプリの決定版好評

アクションゲームを題材に
「Unity」の画面を使って学ぶ


「プログラミング学習に役立つと確信しています」
 人材派遣、学習塾経営と並ぶ主軸事業のIT・AI事業で躍進する『株式会社アポローン』代表取締役社長の林賢太郎さんが自信を持って推奨するのがプログラミング学習アプリ『ワンコインエンジニア』だ。ゲームの作り方やプログラミングを楽しく簡単に学ぶことができるように同社のプログラマーが開発したもので、「AppStore」や「GooglePlayStore」で販売、小中高すべてで必修化されたプログラミング教育の自習に使えることから注目度を高め、販売実績は伸びる一方だ。
『ワンコインエンジニア』は、パソコンや家庭用ゲーム機、スマートフォンなど様々な環境で動くゲームをプログラミング言語だけでなく、マウス操作だけでも作成することができる世界的に人気なゲーム制作プラットフォーム「Unity」の画面を使い、木や岩を壊していきながら、走った距離を伸ばしていく高難度のスマホアクションゲーム「フォレストクラッシュ」を題材にスタート画面から完成まで作り方のすべてを一つひとつが学べるものだ。ゲーム作成に必要なパーツが辞書で説明がされているほか、クイズとしても出題され、遊び感覚で学習ができるのが特長だ。
「AppStore」や「GooglePlayStore」で紹介されている開発者の言葉から、『ワンコインエンジニア』の開発意図が伝わる。
「ゲームを作りたいけどハードルが高い、プログラムを学ぶのは難しそう、学校行くのが高い、そう思っている人たちは世の中にたくさんいるのではないかと思い、少しでも役に立てればと思い、『ワンコインエンジニア』の企画を走らせ、開発を行いました。「Unity」を使ったことがない人でも学べることはたくさんあると思います。何を作っているのか想像しやすいように、アプリリリースされているフォレストクラッシュを使った学習なので、一度触ってから学習をすると、より吸収力が伸びると思います」
「人を輝かせ、人で社会と未来を創造していく」ことを経営理念に林さんが創業したのは2014年。人材派遣事業から学習塾経営、IT・AI事業へと業容のウイングを広げてきた。IT・AI事業は、iOS/Android向けのアプリケーションなどの自社開発を中心にエンジニアの技術力を提供するSystem Engineering Service、ディープラーニングや画像認識、画像生成など最先端のAI技術の活用など多岐にわたる。
(ライター/斎藤紘)

株式会社 アポローン
TEL/03-5829-9384 
Eメール/info@apollon-group.co.jp
ホームページ 
https://www.apollon-group.co.jp/

タイの大気汚染対策に日本発の技術移転
CTCNの事業として最終燃費テスト実施

前段の排ガステストクリア
ミャンマーへの輸出も浮上

 公害排出ガスを低減させ、エンジンの寿命をも延ばす次世代フィルター、『株式会社ターゲンテックス』代表取締役の中村幸司さんが発明した無交換式オイル劣化予防装置『PECS MARK-IV DIESEL(ペックスマークIVディーゼル)』をタイ王国の深刻な大気汚染対策として普及を図るプロジェクトが販売開始に向けた最終段階に入った。この装置を有効性から助成対象に認定した国連の気候技術「センター・ネットワーク(CTCN)」の事業として、販売を担う日本の大手商社が中古トラックを使った燃費テストを実施、その後生産体制を稼働させるが、タイの隣国、ミャンマーに輸出する計画も浮上するなど「CTCN」が進める先進国から途上国への環境技術の移転の典型例になる可能性が出てきた。『PECS』は、永久磁石の独自の配列から強力な反発し合う磁力線を構成し、オイルが通過すると、金属摩耗粉を吸着、微小粒子状物質PM2・5の原因になるカーボンの析出を抑制し、温室効果ガスを大幅に削減する。自動車生産先進国8ヵ国で特許を取得している。
 タイでのプロジェクトは、バンコク首都圏のPM2・5の主要な発生源が中古ディーゼル車の不完全燃焼による黒煙であることに着目した中村さんなどが提案し、タイの天然資源環境省公害管理局をカウンターパートに「JICA」の支援の下で進められた。中古ディーゼルトラックに『PECS MARK-IV DIESEL』を1年間装着してテストを行った結果、排ガス低減が確認されたことからタイ側が「CTCN」に助成を申請し、認められた。
 販売開始に向けた燃費テストは、中古トラックに『PECS MARK-IV DIESEL』を搭載し、軽油1Lで何㎞走行できるのかを調べるもので、過去のテストでは走行エネルギーが約20%向上し、燃費性能も12%改善することが確認されている。
 普及に向けた生産体制は、『PECS MARK-IV DIESEL』のコア技術である永久磁石などを日本で製造し、現地法人がタイの加工工場でフレイムなどを製造、組み立て工場で組み立てる。
 タイでは、約3500万台もの中古ピックアップトラックが走っているといわれ、その排ガスも大気汚染の大きな原因。2024年2月には、タイ当局が首都バンコクとその周辺の県の大気汚染が健康に害を及ぼす水準に悪化したと発表した。中村さんは「『PECS』が普及すれば、この状況の改善に寄与すると確信しています」とプロジェクトの本格始動に期待を寄せる。
(ライター/斎藤紘)

株式会社 ターゲンテックス
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AIは特許の発明者になれるのか
進展するデジタル社会の課題を解説

視野にAIの利活用の拡大
英国では裁判の争点に浮上


 デジタル社会の進展で知財界に新たな課題が浮上した。AIで技術を開発する動きだ。そこから生まれる疑問、AIは特許の発明者になれるのか否かについて、AIの動向に詳しい『弁理士法人オリーブ国際特許事務所』代表の藤田考晴さんにお聞きした。

― AIは特許の発明者になれるのでしょうか。

「結論からいえば、現行の法の下では否です。特許庁は、特許法の諸規定から発明者を権利能力を有する自然人と解していて、特許出願で人工知能などを含む機械を発明者として記載することは認めていません。第一、AIが発明したとしても、学習用データの選択や学習済みモデルへの指示だけでなく、発明した技術が価値あるものか否か、抵触する他の発明がないかを判断するのは人間。さらに冗談ぽくいえば、発明者が発明で得る経済的な利益や名誉権は、デジタルツールには何の意味もないですからね」

― 何故AIが課題になっているのですか。

「発明の創作過程におけるAIの利活用の拡大が見込まれるからです。特許庁の審査部門では2023年に、AIによる自律的な発明の取扱いに関する課題について諸外国の状況も踏まえて整理検討する必要があると表明しました」

― 諸外国の状況はどうなのですか。

「実は、イギリスでAIが発明者になるか否かを争点とした裁判がありました。米国のコンピューター科学者が自身のAIシステムが考え出した発明の特許出願に関するもので、英最高裁は訴えを退け、『英国の特許法では発明者は自然人でなければならない』との判断を示し、発明者の定義を拡大し、AIを搭載した機械も含むべきかという問題にも関連しないとの見解を示しました。この判決について、アメリカでは、発明を考え出すためにAIを使用することを妨げるものではないと論評する法律家もいました」

― 発明にAIを利用する企業が増えそうですね。

「そうなると思いますが、問題もあります。企業は、AIを利用した発明技術で特許を取り、それで利益を得た場合に、AIが主として発明に貢献しており、技術者の発明への貢献度が低いという評価をすれば、技術者の発明にかける創作意欲が減退する恐れがあります。現段階では、AIは発明者として認められるレベルでは発明の創作に関与していないというのが大方の見方だと思いますが、今後、そこをどうバランスを取っていくか考えていく必要があるでしょう」
(ライター/斎藤紘)

弁理士法人 オリーブ国際特許事務所
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