株式会社棚澤晩翠堂 棚澤 節 代表
明治44年創業
当時、大蔵省(現財務省)印刷局でお札印刷の原盤のエッチング加工に携わる。以降、民間に自動車、建設、半導体などでこの技術を生かす製品を提供。現在に至る。
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企業に大きなメリットをもたらす新技術開発
世界が注目! 進化し続ける金型のトップ企業
ものづくり大国としての存在感が年々薄くなっている日本。
その中で、世界トップの金型技術をもつ『棚澤晩翠堂』は、職人の気質や技を大事に
金型技術を探求し続け、新技術を開発したとのことだ。
――「棚澤晩翠堂さんが手掛けていらっしゃる『金型』。一言で言うと、どういうものですか?」
棚澤「そうですね。物作りの基本ということですね。物を作るには、ほとんど金型を使って生産しております。」
――「身近なところでは、バッグとかカメラとかいろんなところについているロゴから、型押しデザインまで、全てこれは金型の成せる技だといえますよね」
棚澤「そうですね。金型の中で作っているのがほとんどですね」
――「そういえば、最近のバッグで、クロコダイル? ワニ皮の型押しをしたバッグって非常に流行っていますよね? あれも金型でやるのですか?」
棚澤「そうですね。金型でしておりますね。少し水をかけてプレスをかけるっていう感じでやっております。」
――「日本製だと本物かまがい物かというのが本当にわからないくらい精巧にできてますね。さて、この棚澤晩翠堂さんでは、新しい技術をまた生みだしたそうですが、プラスティック製品にロゴや文字を入れる際、今までは、製品が出来上がってから印刷をしたものを、プラスティック製品に育成する金型そのものに、文字を入れる仕組みを作ったということなのですが、これはどういうもので、どんなメリットがあるのでしょうか?」
棚澤「まず、簡単に言いますと、金型に、ロゴをフィルムで写して、上からサンドブラストを打ちます。そうすると、回りが艶消しの梨地模様が入るのです。テープが貼ったところが、光面、鏡面、光沢面ですね、状況でキラキラ光って文字が浮きでて見えるということです」
――「なるほど。例えば、身近な製品ですと、キャノンさんのバッテリーもそうですかね?」
棚澤「そうですね。一眼レフカメラのバッテリーの上ケースですね。そのロゴを入れております」
――「なるほど。今までのものは、上から白地で字が見えていましたよね」
棚澤「白木印刷という方法で印刷しているみたいですね」
――「それが今、棚澤社長がおっしゃったように、ベースの部分もざらざらとしていて、キャノンのロゴ体とか細かい表示が艶消しになっているので、文字が浮き出て見えるのですよね?」
棚澤「はい。これは、なかなか難しくて」
――「難しいですよね」
棚澤「文字の回りにザラみを作るためには、文字のテープが残らないとだめなのです。ところが、今までは鉄を削るぐらいの圧のサンドブラストに対して、テープがもちませんでした。ほとんど不可能に近いなと思っていたのですが、それができるようになりまして。」
――「カメラのバッテリーっていうと、すごく小さくてその中にまた小さな文字が書かれていますよね。ポイント数なんていったら、雑誌の写真の下に入っているキャプションよりさらに小さい文字ですよね」
棚澤「そうですね。一番細い文字がね、コンマ2,3ミリぐらいの線の太さです」
――「これを浮きだたせるメリットってどういうことがあるのですか?」
棚澤「金型にそのまま入れてしまうということですな、1個1個後で印刷するよりも、生産した時点で文字が入っているとランニングコストがかかりません。あと、検査の費用がバカにならないんです」
――「検査?」
棚澤「はい。必ずシビアな検査しますので。まず、成型品が出てから検査。それから、印刷する前に検査。印刷してから検査という工程を踏むのです」
――「そんなに検査するのですか?」
棚澤「そうなのです。それが全て検査も省かれるということですね。だから1回の(成型品)検査ですむということですね」
――「物を作ってらっしゃる企業にとっては大きなメリットですよね?」
棚澤「そうですね。はい」
――「それにCO2の削減にもけっこう影響がありそうですよね」
棚澤「そうですね。塗料とか塗装するときにもCO2発生しますが、それと運搬するときのガソリンも全てカットされますので」
――「なるほど。これは素晴らしいですね。コストダウンができて、しかも公共にも貢献するという、すごいと思うのですが、社長、中小企業がもつ技術や環境面やコスト面、これ反映していくにはトータル力が必要だと思いますか」
棚澤「思います」
――「そのために企業間の繋がりや協力は、今後どのような形で発展すればいいのでしょうか?」
棚澤「まずは、最近できてきた民間の異業種交流を積極的にやりましたら、そういうコンタクトが出ると思うんです。それから、企業を退職された方、かなり優秀な技術をもたれた方がたくさんいらっしゃいます。その方がコーディネーターみたいな形で復帰していただけますと、無論、公定機関の力も必要なのですが、そういうのをいろいろ混ぜ合わせてやっていきますと、よりスピードアップすると思います。それが一番中小企業はもちろん大企業も含めて、生き残っていく大きな道じゃないかなと思っております」
――「なるほど。棚澤社長が今おっしゃるように、まだまだすごい技術を持ち、メイドインジャパンを引っ張っていく力があるから、埋もれていく人材を見つけ出していく。それはね、お話を伺っていて、棚澤社長はすごいなと思います。もしよろしければ、今年の総決算としてね、今非常に中国始め新興国に日本は押されております。この日本がアジアのなかで、ものづくり産業を発展させ、生き残っていくための秘訣というのをお教えいただけますか?」
棚澤「そうですね。先程と重複しますが、個々の技術は、かなりまだ日本の型が高いレベルもたれているのですが、そのアッセンブルしてやったような技術っていうのは、やっぱり負けてますね。スケールメリット。例えば水の技術ですね。原子力技術。政府の力もいるのですが、トータルの商売っていうのが負けております。日本は個々の技術は素晴らしいんです」
――「今日は本当にありがとうございました」
(ライター/前川定)
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