地域や医療との連携で、自立と個性を大切にしている。
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「ぼけてもいいよ」「ここに居てもいいよ」
降りていく介護だからこそ「ありのまま」にちゃんと向き合う
おそらく、どんなに多くの介護の専門的知識をもってしても、彼らのデイサービスにおける心と心、人と人との間に生まれる「共生」という、目に見えぬ豊かさにかなわないだろう。
「無意識の豊かさ」と共に日々を生きているのが『デイサービスセンターめぐみ』に集う人たちだと思った。当たり前のことを自分で行う高齢者の方々と、そのきっかけを作る介護をするスタッフの方々。「入浴」「排泄」「食事」の三大介護を重視することは、何より「当たり前に生活する」「当たり前に生きていく」という姿勢のベースになる。そして、自分を受け入れてくれる場所がある、という実感へとつながっていく。それは、決してマニュアルではできないことだ。園吉洋社長は「認知症の方々と、一歩踏み込んだ距離感で関係を築けるかどうかが大切なのです」と話す。
「私たちは、時に0cmの距離で仕事をしたり、距離という言葉を越えた認知症の世界にどっぷりつかることもある」と園社長。人間関係づくりと生活環境づくりという、究極のサービス業に邁進しているのが、『めぐみ』の介護スタッフたちなのだ。例えば、皆で楽しく話すのが好きな利用者に、その機会をつくること。一人で本を読んでいたい利用者の気持ちを察し、そっとコーヒーの1杯を置くこと。長年のその人の生活習慣に近い環境を提供しようとすること。一人ひとりの目に見えない気遣いに加え、今、こういう状況だな、と仲間のスタッフにアイコンタクトを送ること。それができる信頼関係がスタッフ同士にあることが、その瞬間、チームワークを創り上げているのだ。プロとしての身体介助技術・プロとしての認知症ケアという高い専門性がなくとも落ち着いた日々を過ごすことができる。
ここに共通して流れる空気感こそ「共生」であり「無意識の豊かさ」そのものではないか。さらに、利用者の家族にとっても開かれた場所であることも大きい。駆け込み寺として『めぐみ』の扉を叩いた人にも、安心をもたらしている。現在、介護の仕事について見つめ直す、介護職向けのセミナーをはじめ、積極的にネットワークを広げて交流している、園社長とスタッフたち。山形から全国へ、人と人との介護の輪が広がっていくだろう。 (ライター/中村美奈子)
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