新しい発想から生まれたオリジナルの止め輪とバネ
自動車をはじめ、様々な部品メーカーのストップリング(止め輪)やバネの製造をしている「松村鋼機株式会社」。元々は先代の松村剛氏が、金属丸線を四角い平線状に圧延して巻き上げる加工を施した「スパイラルリテイニングリング」を開発したことがはじまり。従来の金型で打ち抜くタイプやJIS規格品のような大量生産のストップリングとは違い、加工過程で発生する出っ張りやヨレが出ず、取り付け用の耳もない優れものだとか。この開発を機に事業展開し、現在では自動車、建設機械、産業機械、通信機器、家電の部品メーカーの大手を顧客としている。
スパイラルリテイニングリングは、主に機械の軸受け部分の部品をしっかり止めて機械が順調に動き、その性能を十分に発揮できるようにする、止め輪の中でも画期的な製品。例えば、自動車用ターボチャージャーのシャフトなどに使用されている。すでに長年の経験と実績を持ち、その安全性と高性能が幅広く支持されている。「耐久性に優れ、材料を無駄にしないので環境にも優しい」と、松村朗社長は胸を張る。
また、1991年には製品開発したオリジナル製品である「スクロウエイブスプリング(波型圧縮コイルバネ)」が誕生。このバネを開発するにあたっては800もの試作を経たという。従来のコイルバネ、プレススタンピングによる波座金及び皿バネの短所を補うことが可能な新しいバネとして、将来大きく発展するバネとして期待を寄せている。
製品開発に多数のメリットを与える技術
「松村鋼機株式会社」のもう1つの強みとして、「カスタムメードの多品種少量生産で、自由なモノづくりをサポートできること」が挙げられる。試作品は原則10個から受け付けていて、材料からサイズまで自由に選べる。そのため機械の大きさに合わせて製品を探す必要がない。さらに、機械そのものを小型化・軽量化でき、自然環境対策や過酷な環境に耐える機械づくりにも貢献している。
今、地球温暖化や大気汚染等の環境問題に向き合うためのエコ活動が盛んで、CO2の削減が叫ばれている。それは自動車業界にも波及して、次々と新しい自動車が開発され、ガソリンから電気へとエネルギーをシフトしている。こうした動きの中で、「松村鋼機株式会社」が製品開発にメリットを与えるのは確かであろう。「自動車はもちろん、他の産業にも製品を提供していきたい。燃料電池やソーラーパネルなどの新分野の製品開発で力になれると思います」と、社長は未来を見据える。「環境負荷の低減活動を通じて経営基盤の充実と地球環境保全に貢献する」という基本理念のもとに、企業活動を通じて人々の健康と豊かな社会の実現を目指す取り組みに注目したい。
(ライター/矢田和彰)