設立以来増益を続けている大阪のテキスタイルメーカー「宇仁繊維」は、国産にこだわり、デザインから製造・販売までを一貫して行う。同社は、日本の伝統を生かしたブランド『和KOMONO 小紋工房』でオリジナル商品の販売、国際的な展示会で高評価を得る。
大阪市の「宇仁繊維」は社長の宇仁龍一氏が大手織物会社を経て1999年に設立した婦人服の生地企画製造・販売をするテキスタイルメーカーだ。主力はブラウスやドレス向けのポリエステル生地で、常時1万五千点のサンプルを揃え、最短3日と他社を圧倒的に凌駕するスピードで納品する。
同社の企画営業部員は、80名ほど。全員が売り上げ予算を持ち、デザインから営業までをこなす。宇仁社長自身も自らに年間2億のノルマを課し営業に回りデザインも行う。なぜ営業がデザインなのか。宇仁社長に聞くと「服が好きな人が集まって自分が着たい生地を作り、楽しくやろうや」というのが基本スタンスなのだという。好きなものを自分で作って得意先を開拓して自分で売る、この満足感がモチベーションを高め、商品に心が入っていくことになる。そして営業体制を支える自社工場は機械を止めずにフル生産だという。
デザインから製造、販売までを一貫して行う高パフォーマンス体制で同社は、成熟した国内の衣料市場に外国の攻勢で国産業界全体の売り上げが減少する中、設立以来増収を維持し続けてきた。
今同社が注力しているのは、インナー業界への浸透と生地の輸出。インナー用途を意識してなかった薄地プリント生地が、日本インナー資材総合展への出品をきっかけにインナーとの相性の良さが評価され引き合いが多くなり用途が広がってきたのだ。インナー用途は肌に触れるものだからと、基準の厳しい規格である「エコテックス規格100」を取得、同商品は世界的なインナーブランドでも採用されている。
その「宇仁繊維」が別に日本の伝統や技術を活かし展開するのが、創作ブランド『和KOMONO小紋工房』だ。繊細で華やかな柄で美しい季節の移り変わりや日本人ならではの表現の「江戸小紋」を「和KOMONO」として製品化したものだ。日本オリジナルにこだわり、京都や北陸の工場で生産された「小紋工房二越縮緬」を使用し、京都の有名工房で作りあげられている。古典花柄コスメポーチや、薬入れ、小紋櫛形財布等、華やかな女性らしいものから、男性にもぴったりな粋なアイテム、お子様に持たせたい可愛らしい小物までそろっている。この「和KOMONO」は東京ビッグサイトで2011年9月6日から9日まで開催された見本市「ギフトショー」、9月20日から22日まで開催されたフランスのパリで開催されたテキスタイルの国際見本市「プルミエール・ヴィジョン」に出品、日本の生地に対し来場者から高品質、高付加価値を評価された。
国産にこだわり今後は輸出事業も強化していくという同社の事業展開は、テキスタイル業界をささえ、これからの日本を元気にしていくだろう。
(ライター/本名広男)