特殊粘弾性ゴムの力で揺れを吸収
木造住宅用制震システム「TRCダンパー」
大切な住まいを地震から守りたいという声が高まっている。その対策として建物の揺れを抑えるため「耐震」「免震」などの方法がある。「耐震」は、壁を固くすることで揺れに耐えるものだが、効果を発揮するためにはたくさんの壁(間仕切り)が必要になる。「免震」は、建物の下に専用の装置を設置する方法だが、住宅への設置には地盤や地形などの制限があるだけでなく建築コストも大きくなる。
これらの課題を解決し、省スペースかつ低コストで揺れを抑える方法が「制震」という考え方だ。「東海ゴム工業株式会社」の『TRCダンパー』は、特殊な粘弾性ゴムが伸び縮みすることで、地震エネルギーを熱エネルギーに変換し吸収する。* その効果は、震度6強の地震で水平変位を最大60%も軽減するというから頼もしい。その性能は(財)日本建築防災協会の技術評価を取得しており、耐震補強の補助対象工法にもなっている。
「東海ゴム工業」はもともと、自動車業界ほかさまざまな産業の防振システムや、高層ビル用制震ダンパーなどで実績のある企業だ。長年培われた制震技術が木造住宅の耐震補強にも生かされているわけだから信頼性も高い。
『TRCダンパー』は、木造住宅の新築・リフォーム時に簡単に施工することができる。筋かいと同様の作業で確実に取り付けることができ、窓の部分にも取り付け可能だ。劣化促進試験では60年相当の試験で性能変化が10%以下だというからほぼメンテナンスフリーである。もちろん、繰り返しの地震に対しても、そのまま使い続けることができる。
耐震設計の場合、揺れに耐えるには多くの壁(間仕切り)が必要だが、『TRCダンパー』による制震設計なら、それが少なくて済むのもうれしい。ひろびろとした空間でありながら、地震に強い家が実現する。
(ライター/大原一宮)
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