良い器は使ってこそ、その良さが更に磨かれる。だから日常生活で使い込んで欲しい、それも彼らの望み。
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手作りのこだわりを形に
新たな陶器文化を神戸から
紅蓮の炎から生まれるとは思えない程、静謐をたたえる器。
土から生まれたとは思えない程、滑らかな肌合い。その姿に愛着がわく、しっとりと掌になじむ。
それら全てが「三宝齋」のこだわり、これが「神戸発の新しいデザイン陶器」
「三宝齋」の代表安井利枝氏の想い、それは「神戸から驚きや発見のある使って楽しい器を発信したい」。機械化すればコストを下げられるが、あえて「手間を掛ける」ことにこだわる。電気やガスを使えば温度管理は簡単だが、あえて薪で焼き上げることで、優しい深みが生まれ、自然の風合いが生きる。それらのこだわりが形となったのが、同社のブランド『SunRieque』である。
地球をイメージした花器「コスモスシリーズ」は、挿し口の角度が変えられ、花の表情をアレンジできることも面白味だが、それ以上に、他にはない柔らかい肌合いを生み出すために徹底して土にこだわり、充分過ぎる手間を掛けている。そうした想いは、特許庁への意匠登録が認められたことでも証明されている。また、その尖ったところのない滑らかな仕上げは、周囲の家具に当たっても、傷付けないという効果ももたらした。
一つひとつを輝かせることに注力しながらも、決して過度な主張にならず、生活の道具として自然に収まるように仕上げる。これも30年以上受け継ぎ、研鑽してきた陶匠の誇りと意志。そして製品の仕上がりは、安井氏が女性ならではの柔らかくも鋭い感性でチェックしている。だからこそ、繊細なラインが維持される。
空間のどこに置いても、違和感なく一枚の絵のようにまとまる。気負うことなく手に取れる。そんなさりげない存在感こそ、「神戸から驚きや発見のある新しい文化」なのだろう。
(ライター/小野領士)
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