「娯美社」代表 下田くに子氏。
下田氏のビジネスを切り開くきっかけとなったのが、中小企業庁による「ヘアダイのチューブの資源化に向けた『理・美容店専門ゴミ収集業』への特化による経営革新」の承認だった。
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理・美容業界初・専門廃棄物をリサイクルにつなげていく
一歩先を行くビューティー界のパイオニア
「今後は事業ゴミは回収しない」という通達を自治体から受けた。しかし、理・美容業で出るゴミは飲食店などと比べれば少く、重さも軽い。とはいえ、毎週一回ゴミを処理場へ運んでいくことは大きな負担となった。だが、この困難が熊本市の「サロンド・一徳」代表の下田くに子氏がひらめきをもたらす。「他の経営者さんもお困りだろう。ならばこれをビジネスにしてみては?」思い立ったら即実行。産業廃棄物処理業の許可証を取得し、理・美容業界専門廃棄物処理業『娯美社』を創業したのが4年前のことだった。
下田氏の思惑は当たった。当初はお金を出してゴミを処理することへの理解をなかなか得られなかったものの、次第に事業ゴミに対する意識の変化が業界からの支持へと変わる。エコ意識の高まりと社会の流れを見据えた下田代表の炯眼は、さらなるビジネスの拡大へとつながっていく。
『娯美社』に注目が集まるのは、単にひとつの業界に特化しているからだけではない。理・美容業では欠かせないヘアダイのチューブの資源化に着手したことにより、中小企業庁より「経営革新支援」の承認を受ける。これを得ることは非常に難しいと言われる中、下田氏の発想力、ビジネスセンスが高く評価されたことを証明するものだ。「ヘアダイのチューブはアルミで出来ているので、再資源化が可能です。ですが、ヘアダイ液が残っていると産業廃棄物として埋めるしかない。そこで、チューブを切り開き重曹液に浸けて中和し、中をきれいにすることで、リサイクルを可能にしました」現在、このチューブの回収を効率的に進めるようシステムを整えているという。「最終的にはアルミを溶かして再生する工程まで自社で手掛けていきたいと考えています」さらには、熊本市内だけでなく、県外、九州、ゆくゆくは全国展開も視野に入れ、事業を展開。理美容業界に新風を巻き起こす、下田氏と『娯美社』の飛躍から目が離せない。
(ライター/石井奈緒子)
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