望月重美 会長
武蔵野美術大学の建築学科で学び、建設会社に入社。ビルやマンション、病院などの建設現場や購買、技術部などを担当。独立して『エム・ファンリティズ研究所』を設立。企業の施設など、資産を効果的に使うためのファシリティーマネージメントを行なう。様々な建設における経験を積み『ファーマ一級建築士事務所』を設立して現在に至る。
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マンションをリニューアルしながら維持管理・NPOが
住民が長く快適に住めるマンションの実現をサポート
日本が高度経済成長を続け、バブルがはじけるまで、マンションの値段は年々高騰していた。その頃マンションは、今住んでいる部屋を売ってできたお金で次の部屋を買って住むという認識の居住スタイルだった。しかし、バブルがはじけてからは、マンションの値段がみるみると下落。マンションは買い換えるものから、一度買えば定住するものに。そして、古くなったら建て直すものから、悪くなったら修理して維持するものへと、大きな意識変革が起こったのだ。
1994年、そんな新しい価値観が世の中に根づきだした頃、発足されたのが『NPO法人リニューアル技術開発協会』だ。同協会は、改修設計コンサルタント、工事会社、材料メーカーなどが、大規模修繕工事の修繕の仕方や新技術を考え、マンション管理組合には、講習会を開いたり、パンフレットを提供したりと、運営をサポートしている。さらに、同業者同士、または異業者間での互いの技術や研究、事例を持ち寄って啓蒙し合い、切磋琢磨していく場となっている。
「マンション管理組合」は、マンション管理に最も重要となる、マンションの区分所有者が持ち回りで運営し、居住者なら誰もが組み入れられる組織だ。事務管理や清掃などの日常管理に加え、数年ごとに、修繕が必要と思われそうな箇所の中長期修繕をして、マンションを維持管理していく。そのための資金(修繕積立金)も必要になってくる。
しかし、ここで大変なのが、住民の合意形成だ。ここでも同協会が協力をしてくれる。例えば、建物の安全性、長寿命化、美観の向上などを整理し、なぜ工事が必要なのか講習会を開くなど、知識と状況を共有して住民の理解を促し、同意に導いていく。また、修繕積立金が足らない場合もしばしば。マンションの販売者は、購買意欲をそそるため、月々の修繕積金額をどうしても低く設定して販売しているのだ。最初に低く金額を設定した分だけ、工事をする際の資金が不足するので、金額を増やさなければならない。そこで、同協会は「長期修繕計画書」を作成し、25年先までのシミュレーションを作成。積立金が修繕する際に足りるように計画を立て、毎月の積立金額の設定を再度行ない、修繕工事が実現する状態にしなければならない。そんなアドバイスもしてくれる。
こういったマンション住民の合意形成が必要なときもしばしばあるにも関わらず、カギ一つで自分勝手にできると思って、マンションに移り住む人も多いそう。しかし、マンションは集合住宅であり、広い意味の共同生活。臭いや音、ペットなどの問題があったり、共同スペースの在り方を考えたりと共同生活を送る場という面も少なくないのだ。
特に今後はマンションの悪くなった部分を修繕だけでは足りず、今住んでいるマンションを住みやすくしていくことが非常に重要になる。階段しかなければ、エレベーターを設置したり、住民が年齢を重ねれば、ストロープや手すりをつけたりといったことが必要となるだろう。そうなると、住民が、より一層マンションの状況を把握し、どう改善していくか積極的に関わっていくことが求められるようになることが予想される。そうなったときに、具体的な方法や考え方を教えてくれサポートしてくれるのが『NPO法人リニューアル技術開発協会』なのだ。今後、さらに同協会の存在が大きなものとなっていくことは間違いないだろう。
(ライター//前川定)
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