「業務の相乗効果で収益を生む。税理士としての信用は事業を行う上で大きい。なぜ他の税理士はやらないのか」。そう語る税理士加藤英司氏は、まさにマルチに事業を展開する「税理士らしくない税理士」だ。
こんど私の事務所を法人化するのですが、名前を『税理士らしくない税理士法人』にしようと思うのです」。加藤英司氏は冗談めかしてそういったが、これは本気だという。「税理士事務所や会計事務所等似通っている名前が多いので、普通の名前では埋もれてしまうんですよ」。確かにその名はインパクトがあり、聞いた人には記憶に残るだろう。この事務所の名づけ方でもわかるように税理士らしくない加藤氏は、その独自の発想で次々に新規事業の企画を行っている。
「今回、鉄筋三階建の建物を購入しました。これは私が今考えている事業に最適なのです。すなわち一つ目としてお茶やお花、英会話の教室、防音対策ができるのであれば楽器の教室等のレンタルルームです。講師として人に教える技術は持っていても、権利金や家賃を払って場所を借りるのは抵抗があるという方を対象とします。その賃貸の条件は、家賃のように定額ではなく、生徒さんが集まってきたら、一人当たりいくらというように料金設定をします。そう、生徒の数にあわせて変動するのです。そうすれば講師の方も借りやすいでしょう。自分が借りる立場だったらと考え条件を設定しました」と、建物の購入を軸に多角的に事業を展開していくのだという。二つ目は高齢化を見据えた事業だという。しかし通常考えられる介護等の事業ではなく、「税理士らしくない税理士」ならではの発想のものだ。
「それは『シルバーねるとんパーティ』です。高齢者向けの異性との出会いのためのパーティですね。今は年配の方が結婚相手を見つけようと出会いのためのパーティを探してもほとんど若者向け。だから私が始めようかと。地元である名東区には、お金はある、暇はあるというお年寄りが多いのです。その連れ合いが亡くなって寂しい等で異性を求めています。それらの方に抵抗がないように、信頼がある会計事務所が行うパーティだということを打ち出したいと思います。こちらも税理士なので変なことはできないし、来てくださる方にも信用していただけるでしょう。また、私は中古車売買もしているのですが、ただ、車をおいておくのはもったいないので、そのねるとんパーティでカップルになった方向けに、ドライブに行きたいということであれば、格安で提供しようと思っています」。なるほど他の業者が同様の高齢者のためのパーティを企画したとしても、年配の方にとっては会計事務所という信頼において加藤先生の方が有利になるだろう。また、高齢者の参加者であれば相続の話も出てくるということで、加藤先生はそういった相談にものれるのではないかと言う。確かに世代的に自分のことでなくとも友人等そうした話は増えてくるだろう。
「三つ目は不動産業です。購入した建物に事務所を入れます。個人的に宅建を持っているのですが、不動産業には業者登録等いろいろ経費がかかります。しかし1件でも仲介すればとりあえず赤字にはなりません。事業としては進出しやすいものだと思います。それに不動産取引には税がつきものです。ローンを組んで住宅を買ったりすると税金の申告が必要になります。土地建物の取引には税金が絡み税理士が必要になってきます。このように不動産業務には税理士の出番となるのですが、私自身が税理士なので自分でできてしまう。税理士が不動産業務をかねていれば、お客様にとっても便利だし、業務のスケールメリットで安くすることもできる。不動産業と税理士は非常に相性がいいのです。なぜ税理士の皆さんが副業で不動産業をしないのか不思議です」。
託児所も経営する加藤先生は、「ゆりかごから墓場までトータルにサポートできれば相乗効果が生まれ、利用者は便利だし、お互いメリットはあるでしょう」と語った。
(ライター/本名広男)