私たちの健康を脅かす生活習慣病。なかでも糖尿病は腎症や網膜症、神経障害など多くの合併症を引き起こす恐ろしい病だ。正月太りに運動不足、「最近ちょっとメタボかな?」という方はぜひ注目してほしい。沈黙の臓器と呼ばれる腎臓の変化をいち早く知らせる新しい検査方法「尿中アルブミン検査」について、『平光ハートクリニック』院長・平光伸也先生にお話を伺った。
健康診断で高血圧に注意、と指摘された方は多いだろう。そもそもなぜ高血圧が危険なのか。そのカギを握るのが〝臓器保護〟だと『平光ハートクリニック』院長・平光伸也先生は語る。「血圧を下げる目的は心筋梗塞や脳卒中を防ぐこと、つまり心臓や脳といった臓器を守ることにあります。血圧が下がると同時に、臓器が保護されているかどうかがもっとも重要なのです。血圧を下げたときに腎臓が保護されているかを見る指標が〝尿中アルブミン〟です」この値が下がった患者さんは、長生きできるといっても過言ではない、と平光先生は断言する。
現在、日本において腎臓病で透析を受けている患者数は約30万人。そのうち45%は「糖尿病性腎症」である。日本透析医学会によると、糖尿病患者の透析療法導入後の生命予後は不良であり、50%生存期間が約4年。なんともショッキングな数字だ。「糖尿病の患者さんの腎臓が保護されているかどうかも〝尿中アルブミン〟の量で判断することができます」と平光先生。糖尿病性腎症の進行を阻止するには、なにより早期発見・早期治療が重要。従来の糖尿病検査よりもさらに早い段階での判別が可能となる新しい検査が、「尿中アルブミン検査」なのだ。また、尿中アルブミンは心血管合併症の予測マーカーとしても注目されている。早期に糖尿病性腎症を発見・治療することで、後から起こる腎不全や心血管合併症を防ぐことにもつながる点も大きい。「糖尿病の患者さんがご家族やお知り合いにいらっしゃったら、ぜひ定期的にこの検査を受けることをおすすめしてください。尿検査ですから痛みもありません。簡便な検査ですが、患者さんの将来を変える検査です」と平光先生は強く語った。現在は尿中アルブミン検査は糖尿病でのみ保険が認められている。だが、その重要性を考えると、ゆくゆくは広く保険適用となることが強く望まれる。
(ライター/石井奈緒子)