治療前に9項目の検査を行い、再発の無い治療プランをつくり歯科治療を行う「吉見歯科医院」。
対症療法的な治療ではなく根治を目指す治療で、患者様の人生までも豊かにしてきた吉見英広院長は、現状のインプラント治療に警鐘を鳴らし、新しく優れた治療法の普及の為に全国を回る。
歯科医院でも本来の予防 対症療法ではなく根本治療で
「吉見歯科医院」は町田市つくし野にてインプラント・義歯・矯正・審美といった診療科目から歯周病・顎関節症などの治療までを行っている。「口内環境は健康な生活の基礎となるものだ」という吉見英広院長は、従来の歯科医院での「発症してから対症療法的に治療」ではなく「病因論に注視した予防や、病気を防ぐための口腔育成」との考え方から、治療の前に9項目の検査を行い、症状の原因から把握し、一人ひとりの患者に合わせた治療プランを考え、再発しない治療を行う。
吉見院長は、対症療法的な治療ではなく、口腔環境全体の環境を考えた包括的な治療を行い、原因を根本から解消する。そしてより治療の精密さを求めるため、自ら歯科技工の分野まで手がける。一人ひとり異なる細かな顎関節の動きを分析・測定し、口腔内全体のバランスをとれる義歯や補綴物を製作する。最終的に矯正や義歯、インプラントなど治療のすべてを駆使して本来あるべき口腔内の環境に調整する。個別の治療は根本的な治療のための一環なのだ。吉見院長はその治療に対する考え方を次のように話す。
「従来歯科での治療の概念は、疾患の発生原因の追究をせずに、発症した症状に対処するといったことをしてきました。本来の予防とは、例えばワクチンを体に打って病気の発症を防ぐ。だから予防接種というのですが、これは原因となるウイルスが特定されているからできることですね。
歯科の予防は、原因がわからないのにとりあえずブラシをといいますが、原因も分からずブラッシングだけというのは予防ではありません。今はたいがいの人がブラッシングをしていると思うのですが、それでも虫歯や歯槽膿漏になる。本来は検査をしてどこに問題があるかを突き止めて、あぶりだし、そこをピンポイントで対処すればいいのです。予防法は人の数だけあるといっていいですね」と吉見院長。
歯の健康は、ブラッシングで単純に歯垢量(=バクテリア数)を減少させればいい、ということではありません。人間の心と身体の根本的なシステムに注目しなければならないと、吉見院長はいう。
「私は真面目に教科書や成書に書かれているとおりに治療したにも関わらず思った結果が出ないという課題を抱えてました。なにか壁を打ち破る方策がないかと探していました。そんな時、今まで見たことも聞いたこともなかった新しい理論に出会うことができ、大きく前進することができました。それは、ウィーン大学歯学部学長、オーストリアドナウ大学総合歯科学センター長であるルドルフ・スラブチェック教授と神奈川歯科大学学長、オーストリアドナウ大学客員教授、ボストンタフツ大学客員教授である佐藤貞雄教授の共同で構築された新しい噛み合わせの考え方(=オーストリアンナソロジー)でした。それらは、『力』と『バクテリア』と『人類の進化』を問題とする理論でした。従来の歯科の考え方や、患者様は、『虫歯菌をなくせば虫歯が無くなるんだ』と、思い込んでいましたが、その考え方では現象の一部を説明しているにすぎないのです。では何を付け加えるべきかというとメカニカルフォースの問題なのです。メカニカルフォースとは噛む力の問題ということ。人間は昼間は歯ぎしりするほど噛む力を使いませんが、就寝後はたいていの人は歯ぎしりをします。それは必要があるから歯ぎしりをするのです。問題なのはときどき強い力で歯ぎしりをすること。そのせいで歯ぐきが腫れたり、歯に亀裂が入ったりします。この強い歯ぎしりの問題を解決しなければ、ブラッシング等では解決がはかれません。この噛む力、メカニカルフォースとバクテリア、この2つを同時に解決しなければならないのです」
その歯ぎしりはなぜ起こるのか。これは歯ぎしりをすることによって昼間のストレスを解放しているのだという。ストレスの解放という面をみるとプラスの面も大きいという。
「そのプラスの面とは、噛む行為が脳に蓄積されているストレス性物質を減少させるということが大学の研究で分かってきたのです。ただ、過剰な歯ぎしりはその力のために歯に亀裂を引きおこしたり、歯を支える歯周組織のダメージを与えて歯を失う可能性が高くなる。だから歯ぎしりを無くすのではなくコントロールする必要があります。そうしたメカニカルフォースコントロールをすることにより虫歯や歯槽膿漏の発生を抑え、再発の可能性を小さくしていけるのです。また顎関節の機能も健康な状態を維持できるようになるのです。」
吉見院長は、全国を講演で回っている。主に臨床実習コースで若い先生方に、この『オーストリアンナソロジー』を教えるのが目的だ。
「これは、噛み合わせを再構築するやり方なのですが、大変難しく、その中には発生学や進化学が含まれている理論なのですが、理論だけ学んでも実践が難しいのです。その概念は、我々は脳も身体も進化の途上にあるので、噛み合わせも完成されたものではないとし、その進化の途上にある噛み合わせに最高の機能を果たさせるにはどうしたらいいのかという理論なのです。これは勘で繕うとしても絶対無理です。たいへんに困難な顎関節の問題や歯並びの問題を精密な分析解析なしに治療をすすめるのは、武器をもたずに戦場に行くようなものです。したがって、常に多くの精密なデータを収集して詳細に分析解析を加えていきます。そしてそのような過程を通じて初めて、正しいかみ合わせのデザインとそれを表す数値が算出されます。正しい噛み合わせを獲得しますと色々なところの機能が向上してまいります。この内容の講習を全国で行っています」
新しい噛み合わせの考え方を 広く知らしめたい
「このシステムによる治療実践と、総合的な人間形成の為の教育機関創設の夢を持っています。前からの夢なのですが、夢だからといって遠いものではなく、かならず叶えられると思っています。マイナスの要因ばかり追っていたら何もできないのです。私のこの診療室やもう一つの診療室も資金があったからできたのではありません。自身の理想とする診療ができる場と若い先生方を育てたいと思う強い一念が設立させたと確信しています。当然のことですが身内からの資金の援助は全くありませんでした。全くの赤の他人が私の思いをくんで資金をお貸し下さったのです。ほんとうにありがたいことです。必死に働いてお返ししました。このやり方が正しいという強い確信と実践が、それに賛同してくださる人々と出会わさせてくださるような気がします。
心のない医療、そういう医療は廃れていくのではないでしょうか。患者様が健康を勝ち取るお手伝いをするのが本来の医療の姿だと思います。そういう医療を広めるためにも、一人の若者が歯科医として、また一人の人間として求められる人格を育成形成できる教育機関を持つのが夢です。」
吉見院長は、社会のなかで自分の医院がどのように社会貢献するべきかを自らに問う。
「私自身、どういった形で社会貢献できるかいつも考えて生きています。大学での研究を今でも続けています。なぜかといえば、その研究結果をそのまま臨床に応用する、これは教科書に載るであろう遥か数十年先の治療を、先取りで実践していく。これは、研究活動をしていなければ無理なことです。このようなことを通じて社会変革の原動力となる方々をサポートしていきたいと考えています。この社会を大きく動かす力の源泉は、必死に働いてらっしゃる人々、そして影で必死にサポートされている女性、真面目に勉学に励む学生達、全ての必死の人々だと思っています。歯を治療し噛み合わせを改善することが、個々の人生だけではなく社会を前進させる一助となればと、日々研鑽しております。」
歯の治療を通し、人々の未来をも考える吉見院長の今後の活躍に目がはなせません。
(ライター/本名広男)