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3・4・5歳児クラスの作品。横5m10cm・縦4m70cmのブルーのシートに貼って2階から吊した。
1・2歳児クラスの作品トラクター。
農園「ワイワイファーム」の農園主。
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一人ひとり命の尊さがわかる子どもへ
自然と触れ合い実体験で学ぶ保育園
キラキラと輝く好奇心あふれる瞳や、人を想いやるという心、
元気よく遊ぶ力強い体をつくるのは幼少期の成長過程において大切なこと。
健康な心と体を育てる保育方針を持つ『西院保育園』に詳しく話しを聞いてみた。
一般的に幼少期というのは子どもの人格を育てる中で最も大切な時期といわれている。とくに命の尊さ、人間関係の築き方、食の大切さなどを幼少期に学ぶことは、子どもの心の成長に著しい影響を及ぼすからだ。物事をぐんぐんと吸収することができるこの時期こそ、心の教育は重要視したい。
そこで『西院保育園』では、まず子供たちの教育にあたる保育士への指導を徹底して行っているという。たとえば正規非正規問わず、「私の課題」として400字詰めの原稿用紙10枚に書き、冊子にしているのだそうだ。
保育士はそこに書いたことを約2年間に渡り実践してくという教育システムなのだが、この期間、子供たちの成長を見守るために自分は何をやるべきなのか、具体的な目標を立てることができる。次に保育士はそれを実践するために自分はどうすべきなのか、子供たちとどう接するべきなのかを自分なりに考え、即、実践することができる。もちろんそれが成功するとき、失敗するとき、ともにある。しかし、それが結果的に子供たちの個性を伸ばし、のびやかな心を育てることが多いという。
しかも、冊子にすることで保育士たちは初心の心を忘れることなく、何年たっても記録として残すことができる。『西院保育園』は、子供たちが成長する過程の中で保育士も成長できる環境も整っているのだ。
ちなみに『西院保育園』は保育理念に「一人ひとりの子供たちに生命(いのち)の尊さを─自然との対話・実体験・造形活動・手作り保育─」を掲げている。その実践としてまず行っているのが、生き物との触れ合いの時間を設けることだという。生き物を育てるという楽しさ、大変さを体験した上で、愛情やいたわりの心を育て、さらに自分たちの育てた生き物が死んでしまった時の哀しみを埋葬までを行わせることで命の尊さを教えるのだという。そうした教育を忘れないでほしいという想いを込め、園児の卒園時には記念樹を手渡しているそうだ。
さらにコミュニケーションの基本である挨拶に関しても、相手の目を見ること、頭をきちんと下げることなどその所作も含め普段から徹底して行うことで正しい「挨拶」を習慣づけさせている。
また、食の大切さに関しては、園で「ワイワイファーム」という農園を持ち、子供たちと一緒に野菜を育てるところから学ばせている。育った野菜等は給食に出すなどして、子供たちに収穫の喜びを噛みしめてもらうそうだが、給食のメニューも、なるべく和食を中心にすることで素朴だけれど美味しい素材の味、日本の食卓を心がけているという。加工食品が多くなっている昨今だが、野菜の美味しさを子供たちの味覚で知る機会にもなり、結果的に野菜の好き嫌い克服にもつながっているのだという。
もちろん、保育士と子供たちとの触れ合いも大切にしている。たとえば子供たちが絵を描いたり、モノを制作している際、保育士が「きれいだね」「上手にかけているね」と声をかけながら、子どもが発言する言葉を受け止める。そうしたコミュニケーションが子供たちと心を通わせるのに一番なのだという。そんな取り組みが2010年10月に「第61回造形表現・図画工作・美術教育研究全国大会」の京都大会で保育を公開するなど評価にもつながっているそうだ。
社会情勢とともに子供たちの生活環境はさまざまに変わる。共働きを余儀なくされる家庭も少なくないが、保育園の数が足りないという待機児童問題は社会問題にもなっている。そこで『西院保育園』では、2012年4月より0歳児を分園に移し、1、2歳児の受け入れを増やす計画を行っているとのこと。働く親御さんたちにとってこれほどありがたいものはない。子どもたちの心の教育は親御さんたちの心のゆとりも大きく影響を与えるのだ。
安心して預けられる環境をつくる。その基盤こそが子供たちの心の安心へとつながっていくのだ。あらゆる視点から子供たちの心の教育に取り組む姿勢に今後も大きく期待したいと思う。
(ライター/小野寺香織) |
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