由緒ある会社の経営であっても
お客さまを思い、心を伝えることには変わりません
食品資材の卸である『尼子商店』の経営者として、先代である父親のサポートも
得ながらも、現社長の尼子康介氏は、自ら商売に一番大切なこととする
「お客様を思う心」を伝えるために日夜奮闘し、
老舗経営に新たな歴史を
つくろうとしている。
創業370年を迎える『尼子商店』の歴史は、江戸時代にまでさかのぼる程の老舗中の老舗だ。戦前まで醸造業を営み、戦後、醸造器機等の食品資材を扱うようになる。その由緒ある『尼子商店』を弱冠27歳で継ぎ、現在29歳の若手経営者として代表取締役を務める尼子康介氏。20代で老舗店の経営者としての道に進むことに躊躇はなかったのだろうか。尼子氏は家業に入ったときは経営者を意識してなかったと話す。
「父が糖尿病になり、自宅療養をしながら仕事を続けていたのですが、さすがにきつくなってきたのか、私に帰ってこいというのです。そのころ私は、自分の未熟さもあり自分の夢を叶えられなかった。それで父に甘えて家業に入ることにしたのです。そのときは経営者として、というのは考えていませんでした。しかし病のせいか父が随分つらそうで。それで27歳の時代表取締役として後を継ぐことになったのです」
尼子氏は、会長として退いた父親のバックアップもあり、業界で経験と知識を重ね、前向きに経営に取り組んでいく。そのなかで得てきたことが「お客様を思う心」だという。
「それは当たり前かも知れませんが実際、自分がここにいるのはお客様をはじめとした皆様のおかげです。恥ずかしながら学生の時は自覚なく、何不自由ない暮らしをしていました。現在、会社の代表の職責について、当時の生活は、お客様がいてこそ、そしてその影では取引先の方や従業員の皆様のおかげであることが分かるようになったのです。お客様を思い、また、お世話になった皆様に報いるため盤石な経営体制を築いていきたいと思います」
尼子氏がお客様を思う気持ちは、由緒ある老舗経営者であるというプレッシャーを跳ね返し、自分の信念とする経営をつき進んでいく原動力となるだろう。
(ライター/本名広男) |