乗り上げ船の解体・撤去を通して
東北の復興につなげたい
東日本大震災の津波で、貨物船等があり得ない場所に打ち上げられている場面を目にしたことがあると思う。鹿児島は種子島のサルベージ・解体撤去の会社『中村産業』ではそうした船舶の解体・撤去作業を行っている企業だ。昨年9月、津波のために仙台湾の岩壁に乗り上げた大型貨物船の撤去のため、『中村産業』の熟練工たちが仙台に向かった。この貨物船は、韓国籍の「GLOVIS MERCURY号」5472トンで、陸地に打ち上げられた船として最大となる。8月に解体スケジュール決まったが、国内で大型船解体のノウハウを持つ企業は限られ、外国のサルベージ会社との厳しい競争の末、同社が解体撤去を請け負うことになった。同社社長は、震災以来、東日本へ思いを寄せ、この船舶の解体作業はぜひ自社で行いたいとの強い意志を持っていた。地元に残ったスタッフも皆、東北の復興を想い、全社をあげての支援体制を取っていた。
作業員たちは、同社専務による陣頭指揮のもと、港内へのオイル漏れを防ぐために、エンジンルームを3ブロックに分け解体を行い、環境への影響を最小限に抑えた。2012年2月の中旬までに甲板室や、機関部のある船尾、内部の解体を終え、作業開始から約5ヵ月、東日本大震災より1年後の3月11日に乗り上げ船の全解体が完了。同社では、完全に陸地に乗り上げた船の解体は初めてのケースで厳しい作業となり、難航を極めたが、作業員たちは最後まで一日でも早い復興を願い、やり遂げたのだ。
(ライター/本名広男) |